テスラに日本企業がついていけない決定的理由 パナソニックもテスラも知る男が語り尽くした

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2017年1月に稼働したギガファクトリーはパナソニックとテスラの共同運営。パナソニックはこれまでテスラ事業の赤字に悩まされてきた(写真:テスラ提供)

とくに感心させられたのが、予算の配分方法。会社が成長するためにはお金が必要だが、テスラは限りある予算を何に費やすのか、時間軸に応じてフレキシブルに変えることができる。それでいて、経営の軸はブレない。イノベーションが起こるのは、まさにこういう場所からだと痛感した。ただし、社員はすさまじい集中力で本当によく働くから、この状態を維持したまま何年も働ける人は少ないだろう。

「今の日本の大企業はスピードについていけない」

――型破りなテスラと、典型的な日本の大企業であるパナソニックは10年にわたって協業関係を続けてきました。その中では、テスラの生産スケジュールやマスクCEOの言動をめぐってパナソニックが振り回される局面もありました。

パナソニックに限ったことではないが、今の日本の大企業は、テスラのような企業のスピードについていけない。課題は、意思決定に慎重すぎる点にある。

日本の製造業には高い技術力があった。半導体も液晶もリチウムイオン電池も、すべて日本が技術的に先行していた。こうした設備産業の場合、市場が拡大期に入ると生産増強が必要だが、日本企業は目先のPL(損益計算書)を心配し、設備投資に慎重になる。そのうち、海外勢がエイヤで思い切った投資をする。中国勢は、政府による補助金もある。そして、いつの間にか生産量で抜かれている。その結果、投資した工場をフル稼働するだけの需要が得られず赤字になって、日本勢は敗北する。その繰り返しだ。

――車載用の電池も同じ道をたどる、と?

間違いなく、すでに電池も同じ構図に陥っている。非常に残念なことだが……。もちろん、これは今初めてわかったことではなく、だからこそ(パナソニックが)高い成長ポテンシャルを持つテスラと手を組むことで、その運命を変えようと思った。

ただ、今の日本企業では、よほどのカリスマ経営者がいるか、創業者が経営に関わっている企業でない限り、彼らについていくのは容易ではない。テスラの場合、北米のギガファクトリーはこれから軌道に乗っていくが、上海、ベルリン、テキサスとテスラの拠点はどんどん増えていくのだから。

テスラ車の車両の底には、7000本もの電池が敷き詰められている(写真はモデルSのバッテリー。雨堤徹氏提供)
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