小児医療が崩壊する!患者と収入「5割減」の衝撃 病院数は20年前から3割減、廃業の決断も

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他の診療科もコロナ禍で患者減少に苦しんでいるが、小児科はとくに患者の減少率が著しい。休校や保育所への登園自粛、団体生活での衛生管理が徹底されたことで、風邪やウイルス性胃腸炎のような子どもの感染症が少なくなっているからだ。

子どもの感染症が減ったことが自体はよいことだ。しかし、救急医療を維持するには、「(風邪などの軽症患者は単価が低いため)患者を数多く診なければ成立しない」(木野理事長)。同病院の外来患者数は年約6万人にのぼるが、現在の診療報酬制度では利益率は2%ほど。そこに今回の患者数の減少が襲った。

20年間で小児科病院は3割減少

また、小児科は固定費を削りにくい事情がある。小児患者の入院収入は、成人の患者よりも高い単価を得られるしくみがある。しかし、この入院収入を得るためには、医師や看護師を多く配置しなければならない。

そのため赤字が続いていても、費用の6割を占める人件費を削りにくい。「風邪などの軽症患者は減っているが、重症患者の数は減っていない。患者が半分になったからといって、入院の体制を維持するためには職員の数を減らすことができない」(木野理事長)

中野こども病院は、地域の小児医療を維持するには欠かせない存在だ。救急患者を24時間365日体制で受け入れており、広範囲から患者が来る。大阪府内にある8つの2次医療圏のうち、大阪市内だけでなく、北河内(大阪府北東部)、中河内(大阪府東部)地域の患者をカバーしている。輪番制で救急を受け入れる病院は他にもあるが、同院のように常時受け入れる病院は少ない。

こうした小児科専門病院が広範囲から患者を受け入れているのは、小児科医不足を背景に小児科の集約化が進められてきた結果だ。小児科を標榜する病院は2018年時点で2567病院で、1996年と比べて約1200、3割ほど減っている。

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