楽天が支援する新がん「光免疫療法」の実力度 副作用を抑制しつつ、がん細胞を破壊する
これまでに実施された治験では、日本国内で3人中2人の患者でがんが30%以上縮小。アメリカでは30人を対象に同様の治験が行われていて、4人で完全にがんが消え、9人でもがんが30%以上縮小している。
国内の患者数は少ないため、大規模な治験は難しく、ほかに有効な治療法もないために小規模な治験データのみで承認された。
この薬は「光免疫療法」と呼ばれるメカニズムを用いた世界で初めてのがん治療薬で、注目度が高かった。いったいどういったメカニズムで効果を発揮するのだろうか。
化学物質ががん細胞を破壊
薬のベースになっているのは、特定のがん細胞のみに結合できる「抗体」と呼ばれるもの。抗体そのものは、がん細胞の働きを妨げて増殖を防ぐ機能があるため、現在の標準治療でも広く使われている一般的なものだ。
この抗体に、「IR700」という化学物質が結合している。この物質はもともと、道路標識や新幹線などの青色塗料として使われており、本来は水に溶けないが、化学的に手を加えることで一時的に水に溶ける性質に加工できる。
がん患者にこの抗体とIR700がセットになっている薬剤を注射すると、抗体を”運び屋”としてIR700ががん細胞まで一緒に運ばれる。
特徴的なのはここからだ。薬の投与後、がん細胞に向けて近赤外線を照射すると、光を吸収したIR700が水に溶けない本来の性質に戻る。この急激な変化によってがん細胞の膜に傷をつけ、細胞膜が破壊されたがん細胞が破裂、死滅してしまうというメカニズムだ。
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