楽天が支援する新がん「光免疫療法」の実力度 副作用を抑制しつつ、がん細胞を破壊する

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こうした作用に加え、破裂したがん細胞の内容物が組織内に飛び出すことで、がん細胞を攻撃する免疫細胞を活性化させる効果も確認されている。がん細胞への攻撃と免疫の活性化、どちらの要素も持ち合わせているため、光免疫療法と呼ばれている。

この技術のメリットは、光の照射によって毒性のオンとオフを切り替えられること。「従来の抗がん剤は正常細胞にもダメージを与えてしまい、副作用が大きかった。毒性がオフの状態で投与し、光の照射で局所的にオンにすることで副作用を大幅に抑えられる」と開発者の小林久隆氏は話す。

頭頸部以外へ適応拡大できるか

今後の焦点になるのは頭頸部がん以外への適応拡大だ。

抗体が運び屋として機能できるがんは頭頸部がん以外にもあり、原理的には抗体を換えれば、ほかのさまざまながん種にも適応できる。実際、「研究レベルでは20種類以上の抗体で薬剤候補を作成している」(小林氏)。

「アキャルックスはこれから展開していく最初の製品」(三木谷氏)と意気込むものの、楽天メディカルとして適応拡大のための治験は現在行っていない。

【2020年10月4日12時52分追記】初出時の記事の一部を削除しました。

今回、楽天メディカルが1つの薬剤の承認を得るのに数百億円の資金が必要だったように、新しい薬剤の開発には多額の費用がかかる。そのため、ベンチャー企業が開発スピードを上げるために資金やノウハウを持つ大手製薬企業と提携するのは珍しいことではない。

こうした大手製薬企業との提携について、楽天メディカルジャパンの虎石貴社長は「柔軟に対応していく」と答える。適応拡大など今後の開発がどう進んでいくのか、そのスケジュールは未知数だ。

楽天メディカルの光免疫療法が今後、がん治療にどれだけ貢献できるのか。三木谷氏が言うように、まだスタートラインに立ったばかりだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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