リニア提訴を前に露呈、静岡県の不都合な真実 県の専門部会委員が訴訟準備勉強会の講師に

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県がJR東海の環境アセスメント(環境影響評価)に厳しい批判を続けているだけに、川村氏らは川勝知事の主張が住民サイドに立つと高く評価してきた。行政訴訟に有利に働くよう、メディアの注目を集める川勝知事の発信力に期待したいのだろう。

9月5日、静岡市で開かれた訴訟に向けた学習会で講演する県専門部会委員の地質学者、塩坂邦雄氏(筆者撮影)

訴訟に向けた「学習会」のメイン講師は、県の地質構造・水資源専門部会委員を務める地質学者、塩坂邦雄氏。7月末に開催された合同専門部会を受け、県が8月13日、国交省へ送った意見書を塩坂氏は資料として配布した。JR東海が環境アセスメントで使用した水収支解析方法、生物多様性への影響への疑問点を指摘し、「南アルプスの地質構造や断層の考え方がJR東海はわかっていない」、「環境アセスメントは“環境アワスメント”で初めから事業ありきのものだった。もう一度、環境アセスメントをやり直すべき」など約1時間にわたって持論を展開した。まさに、今回訴訟の理論的裏付けを担う存在感を発揮した。

塩坂氏は個人的な立場で講師を引き受けたのだろうが、県専門部会委員がリニア反対につながる発言を繰り返しただけに、「県もリニア反対訴訟を応援している」と参加者の多くが勘違いしたかもしれない。

県はリニア反対の横断幕を放置

実際に、県は反リニアを応援しているようにも見える。

静岡県庁前で金子慎JR東海社長を迎える市民団体の横断幕や手書き看板(6月26日、筆者撮影)

金子慎JR東海社長が川勝知事を訪問、準備工事の再開を要請した6月26日のことである。川勝、金子「対談」の1時間以上前から、「南アルプスに穴をあけるな」などびっくりするような横断幕や手書き看板が静岡県庁玄関前に現れた。静岡市議や運動家らがマイクを握って、「リニア反対」を連呼、金子社長の到着を待っていた。県では、メディア対応に県職員を当てたが、派手な横断幕や「リニア反対」連呼にまったく対応しなかった。

県庁敷地内を管理する担当課長に聞くと、「金子社長訪問は大々的に報道されていたので、リニア反対の人々が来るおそれはあったが、あまり度を越えなければ問題ないと考えていた」と回答。県庁内を巡回する警備員による注意等もなかった。金子社長を出迎えた派手な横断幕はまるで静岡県が「リニア反対」をひそかに応援しているかのように映った。

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