自動車業界は、10年の世界主要市場での販売見通しは依然厳しく、回復は緩やか《スタンダード&プアーズの業界展望》

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部品メーカーにとっても、環境対応車・低価格車への対応が重要性を増す

国内自動車部品メーカーの業績も、09年1~3月期に自動車メーカーが在庫削減のために大幅な減産に踏み切ったことで大きな打撃を受けた後、同四半期を底に回復傾向を示している。

09年4~6月期以降の自動車生産の回復と、各社による固定費の削減などに伴い、09年7~9月期には多くのメーカーで営業利益が黒字化し、フリー営業キャッシュフローが2四半期連続で黒字となった。デンソー(AA/ネガティブ/A−1+)、豊田自動織機(AA−/ネガティブ/A−1+)、アイシン精機(A+/ネガティブ/A−1)は、10年3月期の業績予想を上方修正し、営業黒字を見込んでいる。収益の回復に加え、設備投資を大幅に絞ることで、同期にはフリーキャッシュフローの赤字が避けられる可能性は高い。

しかしながら、世界の主要市場で自動車需要が本格的に回復するには時間がかかり、10年の日系自動車メーカーの生産台数は08年の水準を1~2割下回る可能性が高い。低価格車へのシフトの加速や原材料の価格動向も、収益を圧迫する要因となりうる。

これらを踏まえ、スタンダード&プアーズは、国内部品メーカーの収益・キャッシュフローは11年3月期も圧迫されるとみている。09年3月期にキャッシュフローの大幅な減少と有利子負債の増加により悪化した財務指標が回復するには時間がかかる可能性が高い。

今後、自動車市場低迷の長期化やそれに伴うトヨタ自動車の販売不振・減産などの影響を受け、キャッシュフロー、財務内容の回復が妨げられる懸念が高まれば、格下げ圧力が増すことになろう。

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