通勤電車の混雑、京急は「お家芸」で回避する 「オフピーク乗車」の裏に光るベテラン社員の技

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金沢文庫駅の上りは3番線と4番線が島式ホームの両側にある。朝のラッシュ時、基本的に快特が出発する3番線は後ろ(浦賀寄り)に、特急が出発する4番線は前(品川寄り)に、空の4両を増結する。これは増結車を待つ両番線の乗客の列が重なってホーム上が混雑するのを防ぐ工夫だという。同駅を毎日利用するユーザーはこの“すみ分け”をよく理解したうえで列に並んでいるようだ。

3番線は後ろに品川止まりの4両編成を増結する(記者撮影)

朝のラッシュが終わると、日中は泉岳寺行きまたは都営線直通の快特、羽田空港行きのエアポート急行、各駅停車がそれぞれ10分に1本ずつといったわかりやすいダイヤが続く。

品川駅と金沢文庫駅の役割は夕方以降の帰宅ラッシュ時間帯になると逆になる。横浜方面へ向かう下り列車の場合、品川駅に都営線からの列車が到着すると、後ろに空の4両を手早くつなげて出発する。増結車は金沢文庫駅で切り離す。

ただし、金沢文庫駅でも帰宅ラッシュの反対方向である、品川方面の上り列車(8両)に4両を増結する列車がある。これは品川駅から12両の下り列車として折り返してくるために走らせている。

ベテラン社員「運転主任」とは?

京急のお家芸ともいえる手作業による信号・ポイントの切り替えや車両の増結・切り離しを担っているのが「運転主任」の肩書きを持つ社員。品川駅や金沢文庫駅のホーム上で見かける黄色いヘルメットをかぶったベテランたちだ。

4番線は前(画面奥)に増結。運転主任が2人で作業する(記者撮影)

運転主任は経験が15年以上の運転士の上位職で、信号扱い所でのテコ操作(ポイントや信号の切り替え)やホームへの案内放送、車両運用スケジュールの作成、ホームと車庫線での車両の入れ替えなど、担当業務は多岐にわたる。

同社によると、金沢文庫駅では増結を49本、切り離しを29本、 品川駅では増結を23本、切り離しを18本実施している。増結は約2分、切り離しは約1分で完了する。短期間で済ませることができるのも、信号を手作業で切り替えている京急ならではの技だ。8両側と4両側、2人の運転主任が担当する。

運転主任の経験者は「8両のほうには乗客がいるため、連結の際に衝撃を与えないように気を遣う。逆に弱すぎると連結器が機能しないので力の加減が重要だ」と話す。雨の日はとくに慎重に作業をしているという。

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