通勤電車の混雑、京急は「お家芸」で回避する 「オフピーク乗車」の裏に光るベテラン社員の技

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新型コロナの感染拡大に伴う移動自粛要請が全面的に解除された直後の6月22日、京急電鉄は「オフピーク乗車を促進するため」として、7月20日から平日ダイヤの一部を変更する、と発表した。

9時5分発の快特が新たに12両編成になった。その次の快特は8両編成(記者撮影)
3番線は後ろに4両を増結する(記者撮影)

具体的には、朝ラッシュのピークの後に走る快特のうち、上下各1本を8両から12両の編成に変更するというものだ。上り列車は金沢文庫駅9時5分発の京成高砂行き、下り列車は品川駅10時2分発の三崎口行きを対象にした。

8月下旬のある朝、この上り列車が金沢文庫駅を発車した時点の乗車率は編成全体で50%程度(コロナ前は110%)だった。増結だけが要因ではないが、輸送力が1.5倍になることから一定の効果が出ているといえそうだ。同社担当者は「オフピーク乗車をお願いしておきながら『時間をずらして乗ったら余計に混んでいた』という事態は避けたかった」と話す。

12両編成を1本増やすのも簡単ではなかった。車両が出払っているなかで増結する4両と乗務員をどう確保するか、「1カ月という短期間で、各部署との調整に苦労した」という。さらにこの列車は都営線へ直通する。増結・切り離し作業が新たに加わっても都営線との接続駅である泉岳寺駅の到着時間を変えるわけにはいかない。そのため、前後の列車を含めて秒単位でダイヤを調整。始発となる三崎口駅の時刻表上の出発は1分早めた。

ダイヤ改正で混雑緩和は得意技

京急は以前から列車の運用を工夫することで混雑緩和を図ってきた。2016年11月のダイヤ改正では、帰宅時間帯の19時29分以降に品川駅を発車する下り列車について、都営線から横浜方面へ直通するすべての列車に空の4両を増結することにした。

連結作業が終わるまで乗客は枠のなかに並んで待つ(記者撮影)

これにより、JRからの乗り換え客が多い品川駅発・横浜方面行きの下り列車は、12両または8両の同駅始発か、空の4両を増結した都営線からの列車のいずれかとなるため、座って帰れる機会が増えたという。

コロナ禍の長期化でリモートワークや時差出勤がずいぶんと浸透してきた印象だ。経済活動が正常化していくにつれ、再び通勤・通学ラッシュの混雑が増すことが予想される。京急の広報担当者は「列車の運用は複雑だが、京急線を毎日利用する乗客も“プロ”であるため、スムーズに乗降してもらえて感謝している」と話す。同社に限らず鉄道各社は混雑緩和に知恵を絞っているが、効果を上げるにはやはり利用者側の協力が不可欠だ。

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