としまえん跡に「ハリポタ」、西武が描く将来図 世界で2番目の「スタジオツアー」2023年開業

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その後、芙蓉総合リースもこのプロジェクトに参加した。スタジオツアーの運営を行うワーナー・ブラザース日本法人に対し、長期にわたって施設をリースする。同社はみずほ銀行系で不動産リースに強みを持つが、「本事業のような用途での取り組みは初めて」(辻田泰徳社長)という。

西武ホールディングスの後藤高志社長(撮影:尾形文繁)

西武ホールディングス(HD)の後藤高志社長は、昨年9月にロンドンのスタジオツアーを視察した。「本当にすばらしい。たいへん見応えのある内容で時間を忘れるほどだった」。今年7月に東洋経済が行った取材で、後藤社長は視察のもようを興奮気味に話した。大人も子どもも楽しそうにハリポタのガウンを着て、つえを持っていたという。大人も虜にしてしまう。これがハリポタの魔力だ。

としまえんの敷地は約21万平方メートル。このうち9万平方メートルがスタジオツアーの敷地となる。施設の広さは約3万平方メートルで、約半日かけて展示スペースを回るという。

西武グループ浮上の力にも

「会社四季報業界地図2020年版」(小社刊)によれば、国内の遊園地、テーマパークの入園者数は、東京ディズニーリゾート(千葉県浦安市)が3256万人、USJが1460万人と多数の客を集めるが、としまえんは1桁少ない113万人にとどまる。もっともスタジオツアーは施設内が混雑しないよう、入場人数を調整してチケットを販売するとしており、オープン後にディズニーリゾートやUSJ並みの集客となることはなさそう。しかし、話題をさらうことは間違いない。

西武としても土地の賃料収入を得るだけでなく、「豊島園駅の改修を含むさまざまなプロモーションプランを検討する」(後藤社長)という。豊島園駅がハリポタの世界感を再現した形でリニューアルされるかもしれないし、ハリポタのラッピング列車が沿線を走る可能性も高い。主要駅でハリポタグッズを販売したり、プリンスホテルでハリポタの宿泊パック商品を販売したりするといったことも考えられる。

鉄道とホテルを事業の2本柱とする西武HDはコロナショックで業績低迷にあえぐ。そんな状況下でのとしまえん閉園は後ろ向きなニュースととらえがちだが、ハリポタのスタジオツアーに生まれ変わるとなれば話は違う。コロナ禍にあって、後藤社長は「ピンチをチャンスと捉えて、経営を強くする」と繰り返し話している。今回のプロジェクトが経営の浮上につながるか、目が離せない。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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