野田線がカギを握る東武鉄道の成長戦略 急行運転の開始や伊勢崎線との直通運転も

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もう一つの目玉は、スカイツリーライン(伊勢崎線)とアーバンパークラインの直通化だ。今回の発表内容に詳細の記載はないが、両線は春日部駅で交差しており、浅草・北千住から春日部を経由して岩槻・大宮方面、または野田市・柏方面への直通電車が登場することになりそうだ。また、行楽向けに船橋・柏方面から日光・鬼怒川方面へ直通列車も生まれるかもしれない。

いずれにせよ乗り換えが不要になることで、アーバンパークラインは「都心まで1本で行ける路線」に変貌することになる。東京メトロは日比谷線でアーバンパークラインと同じ車両の4扉化(現在は3扉)と20メートル大型化(同18メートル)を進めると発表しており、将来の日比谷線との直通運転も視野に入る。

沿線人口増加へ攻勢

アーバンパークラインの沿線自治体にとって、都心への直通化は悲願だった。これまでも、大宮における京浜東北線との乗り入れや、浦和美園まで走る埼玉高速鉄道が岩槻まで延伸された際にアーバンパークラインと結ぶ案が浮上していた。自治体などが中心となってその実現を模索していたが、大規模な施設改修が必要になるなどの理由で、これまで実現してこなかった。

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500戸の分譲が計画されている清水公園駅前の用地

しかし、今回は直通化や複線化を進めて利便性を向上させることで、逆に沿線人口を増やしていきたいという東武の攻めの戦略が見て取れる。その象徴が、清水公園駅前の住宅地開発・分譲プロジェクト「ソライエ清水公園アーバンパークタウン」だろう。

同駅東側の区画整理済みの土地で500戸の戸建て住宅を分譲するという大型の不動産案件。6月には最初の住宅が竣工し、分譲物件も拡大させる予定だ。広告に人気コミック『のだめカンタービレ』のキャラクターを起用。自然やコミュニティ交流、自分らしい暮らしの実現などをコンセプトに入居者の獲得を目指しており、アーバンパークラインの輸送力向上を追い風の材料にしたいところだ。

東武鉄道は2016年度までの経営目標として、営業利益650億円、当期純利益320億円を掲げる(2013年度はそれぞれ560億円、315億円)。東京スカイツリーの開業は同社の業績を大きく押し上げたが、タワー事業は開業当初が集客のピークといわれ、いかに集客を維持していくかに力は注がれる。

そういう意味ではスカイツリーに代わる新たな成長の柱が必要となる。そこで目をつけたのが、発展余地がまだまだ残るアーバンパークラインとその沿線のテコ入れということになる。将来人口の推計では、同沿線は長期的に横ばいからゆるやかな減少傾向に入る。それを人口が増加する沿線にできるか。アーバンパークラインが東武鉄道の成長を握る路線となることは間違いない。

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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