有料着席列車「THライナー」の長所と今後の課題 続々と登場するデュアルシート列車の特徴

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6月6日から運行開始したTHライナー(写真:東武鉄道)

6月6日、東武鉄道に新しい座席指定有料列車「THライナー」が登場した。4扉通勤型電車のロングシート部分が回転して、クロスシート車になる「デュアルシート」車で運行される通勤ライナーである。

鉄道車両はラッシュ時には収容力、それ以外の時間帯では快適性を追求したい。前者はロングシート車、後者はクロスシート車が好ましいが、車両基地の広さや車両への投資には限界があり、両者を必要な数だけ保有するのは簡単ではない。

こうしたことから、ロングシートを回転させてクロスシートにするデュアルシート車が考えられた。実用化されたデュアルシート車は、1996年に近畿日本鉄道が登場させたL/Cカーが最初だ。背もたれが高いクロスシートが、自動的に回転してロングシートになるデュアルシートであり、快適性と実用性が両立された。

「有料」通勤列車の座席に

転機が訪れたのは2008年であった。東武鉄道が50090型電車にデュアルシートを搭載し、「TJライナー」として運行したのである。TJライナーが、それまでのデュアルシート車と異なったのは「有料座席列車」として運行されたことだ。

東武鉄道では伊勢崎線系統で有料特急による着席通勤需要に応えていたが、東上線には有料特急が存在しないため、こうしたサービスが行えなかった。デュアルシート車を導入すれば、最低限の投資で有料座席列車を設定できると考えられた。

それまでは「ラッシュ時はロング」「日中はクロス」と考えられていたデュアルシート車を「ラッシュ時はクロスで有料列車」「日中はロングで通勤電車」と逆転の発想をしたのである。首都圏の鉄道は非常に高い乗車率があるため、有料であっても快適なクロスシートで確実に座れるTJライナーは好評を持って迎えられた。

TJライナーの好評を受け、西武鉄道「S-TRAIN」「拝島ライナー」(2017・2018年)、京王電鉄「京王ライナー」(2018年)、東急電鉄「Q SEAT」(2018年)、しなの鉄道「有料快速」(2020年)と、デュアルシートによる座席指定有料列車が、続々と新設された。

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