有料着席列車「THライナー」の長所と今後の課題 続々と登場するデュアルシート列車の特徴

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デュアルシート通勤ライナーは、快適な通勤時間を提供してくれるが、課題もある。

車端部がロングシートとなっており、この部分の座り心地自体はクロスシート部分より優れるものの、両端には肘掛けがなく、ドリンクホルダーなどの設置もない。

特に西武鉄道40000系では、2号車13~15E、9号車1~3Eは窓が背面側にしかない座席となっている。夜間では問題が少ないが、西武秩父―元町・中華街間を走る土日祝のS-TRAINは行楽利用が主であり、改善してほしいところだ。

また、車端部の3人掛けロングシート部分は多くの車両で両側で肘掛けがない。最新のしなの鉄道SR1系では車端部にも2人掛けデュアルシートを設置している。1席減るが、この方がサービス格差がないのではないか。

クロスシート部分も、扉間の座席3列のうち、側扉に近い1列はほぼ側窓がない。外の景色を写しだす薄型モニターを取り付けられないだろうか。側窓とは多少景色はズレるが、1両1か所のカメラ設置でも外が見えたほうがいい。

これだけデュアルシート車が登場しているのだから、将来的には車両更新時に「デュアルシート車専用の車体」を開発し、置き換えてもいいように思える。

また、ドリンクホルダーが設置された車両でも座席背面に取り付けられているため、側扉に近い座席では使えない。側扉横の袖仕切りをなくすことで、その分だけ肘掛けの幅を広くし、テーブルを収納して代わりにはできないのだろうか。

特急型車両が登場?

こうした問題点は、有料特急列車やJRの普通列車グリーン車では見られないものである。久喜―上野間、西武新宿―拝島間、西武秩父―池袋間、横浜―池袋間、新宿―八王子間など、JR普通列車グリーン車、有料特急と競合する区間もあり、可能な範囲で改善してほしいところだ。

これらの点を考慮してか、東武鉄道は2017年に発表した中期経営計画で、「特急車両の地下鉄乗り入れに向けた検討」を掲げている。また西武鉄道001系「ラビュー」は地下鉄直通性能を有している。

小田急電鉄「MSE」は、地下鉄線内でも「ホームドアと位置が合う側扉だけを開く」ことで、有料特急車両の地下鉄直通を行っている。

デュアルシート車より本格的な特急型車両が、例えば元町・中華街から、西武秩父や東武日光に直通する未来も、夢物語とはいえないかもしれない。 

安藤 昌季 乗り物ライター

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あんどう・まさき / Masaki Andou

1973年、東京都生まれ。編集プロダクション「スタジオサウスサンド」代表で、通勤電車の座席から寝台まで広く関心を持つ「座席鉄」。「鉄道ぴあ」「旅と鉄道」「AERA.dot」「週刊日本刀」などで、乗り物・歴史関係の執筆を広く手掛けるほか、鉄道キャラクター企画、ゲームデザイン、イベント主催なども。著書は「教えてあげる諸葛孔明」(角川ソフィア文庫)、「夢の新幹線 ものしり学習帳」(玄光社)「日本全国2万3997.8キロ イラストルポ乗り歩き」(天夢人)

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