ヒューリック、不動産業界で「一人勝ち」の事情 目標は毎期100億円増益、コロナが問うその実力
1957年に「日本橋興業」の名で創業した同社は、もともとは富士銀行(現みずほ銀行)の店舗が入居するビルを賃貸・管理していた。銀行という太客が生み出す安定収益に長らく安穏としていたが、みずほ銀行副頭取だった西浦三郎氏(現会長)が2006年に社長に就任すると、「変革とスピード」を掲げた拡大戦略を推し進める。好立地かつ容積率を余らせていた銀行店舗ビルを次々と建て替え、賃貸事業を拡大させていった。
2008年に東証1部へ上場を果たすと、2012年には業績不振に喘いでいた不動産会社「昭栄」を事実上吸収合併。その後は自社開発物件のREIT(不動産投資信託)などへの流動化や、市場から取得した収益物件の転売を加速させ、現在の地位を築いた。
物件取得の決定までに最短で2日
他社と比較したヒューリックの特徴は、不動産物件を調達する能力の高さだ。西浦社長時代に意思決定のプロセスを簡素化し、物件売却の打診を受けてから取得の可否を決めるまで最短2日というスピードを実現させた。「あそこはあっという間に買っていく」(大手デベロッパー)と、同業他社も舌を巻く。
コロナ禍でも意思決定の速さが生かされそうだ。7月中旬以降、企業から決算対策として保有不動産の売却話が持ち込まれるようになった。資金化を急ぐ企業にとって、時間をかけて検討した結果、取引を断られるのは困る。ヒューリックにとっても、入札によって価格がつりあがるのを避けられる。
また、吉留社長は「決済能力が高いと、企業から時限を切って『物件を処理したい』と(ヒューリックに)直接問い合わせが来る」と明かす。6月末時点で平均0.57%という超低金利の資金調達能力を武器に、今後も投資の手を緩めない方針だ。
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