テレビ価格上昇をもたらした意外な背景 反転上昇の牽引役は4Kではなかった

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ところが、その後は特需の反動で、12年には645万台まで出荷が急減。一気に“冬の時代”へ突入した。こうした状況下、メーカー各社は型落ちの中型テレビを乱売。価格崩壊につながり、経営難に陥る会社も出た。

メーカーの姿勢が変化

だが、13年8月には販売金額が前年同月比でプラスに転じ、14年2月には販売台数も上向いた。背景にあるのは、メーカーの姿勢の変化だ。「各サイズ帯でモデルチェンジをしながら価格をコントロールしていこうという動きになった」(BCN総研の道越一郎エグゼクティブアナリスト)。

もちろん、メーカーの思惑だけで価格が上がるわけではない。需要の復調も単価上昇につながっている。

「需要先食いの影響が終わり、徐々に従来のサイクルに戻りつつある」(前出のメーカー幹部)。最近の買い替え客は従来より大型のものを選ぶ傾向があり、単価上昇に寄与している。20年の東京五輪に向けて4Kの本放送開始も見込まれ、メーカーの期待は膨らむばかりだ。

ただ、思惑どおりに復調が続くかは不透明だ。3月までは消費増税前の駆け込み需要が販売を押し上げた面があり、4月以降は反動減が懸念される。スマートフォンやタブレットが普及し、かつてに比べ存在感も薄らいでいる。

さらに、「今の4Kテレビは、既存のフルハイビジョンのコンテンツを高解像度技術の利用で4K並みの画質に向上させている。その技術では日本製に強みがあるが、本放送が始まると強みが薄れ、価格は変化する可能性がある」(BCN総研の道越氏)。回復基調にあるとはいえ、テレビ市場の足取りはまだおぼつかない。

(撮影:尾形文繁 =「週刊東洋経済」2014年5月3日-10日合併号<4月28日発売>の「価格を読む」を転載)

許斐 健太 『会社四季報 業界地図』 編集長

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このみ けんた / Kenta Konomi

慶応義塾大学卒業後、PHP研究所を経て東洋経済新報社に入社。電機業界担当記者や『業界地図』編集長を経て、『週刊東洋経済』副編集長として『「食える子」を育てる』『ライフ・シフト実践編』などを担当。2021年秋リリースの「業界地図デジタル」プロジェクトマネジャー、2022年秋より「業界地図」編集長を兼務。

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