アメリカ迷走が世界経済の巨大リスクとなる訳 コロナ封じ込められず需要がさらに弱まるかも
国内で新型コロナ・景気対応に追われる主要国にとって、これは泣き面に蜂だ。
米国経済は世界の総生産(GDP)の約4分の1を占める。その大部分はサービス関連で、新型コロナの影響を直に受けるのはレストランなど世界経済との結び付きが弱い業種とはいえ、負の波及効果が全く無いわけではない。失業者が増えれば消費が減り、輸入も減る。景況感の悪化は、諸外国で生産されることの多い設備や資材への投資減退につながる。
米国の輸入額は1─5月に13%超、約1760億ドル減った。
5月のドイツの対米輸出は前年同月比36%も落ち込んだ。ドイツは新型コロナ感染症の封じ込めで世界屈指の成功を収めたと考えられている国だ。
日本の景気回復スピードは、米国が感染症封じ込めに成功するかどうかに直結するとみられている。
第一生命経済研究所の熊野英生・首席エコノミストは、米国で新型コロナの感染拡大が止まらず、さまざまなアジア諸国からの対米輸出が伸びなければ、日本の景気回復は確実に遅れるだろう、と言う。
カナダとメキシコ
IMFは、今年の米経済がマイナス6.6%成長になると予想している。しかし国境を接するカナダ銀行(中央銀行)が予想する米経済成長率はマイナス8.1%と、もっと悲観的だ。
感染症がさらに拡大して成長率見通しが一段と悪化すれば、カナダ経済を直撃するだろう。対米輸出は同国の輸出の約4分の3を占める。
米国の南で国境を接するメキシコでも、新型コロナの感染者数が記録的な勢いで伸びている。しかし、ロペスオブラドール大統領は、米国の数字を引き合いに出して自国の対応への批判をかわしてきた。
メキシコ経済は今年、10%かそれ以上のマイナス成長が予想されている。
大統領は、今月1日に発効したUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)によって貿易と投資に弾みがつくと期待するが、経済見通しを巡る悲観論が広がっている。
米大手民間調査機関コンファレンス・ボード(CB)のシニアエコノミスト、エリザベス・クロフット氏は、米国で失業が増えて所得が減れば、世界的に消費に悪影響が及ぶと指摘。「1歩進んで2歩下がる」状態だと語った。
(Howard Schneider記者)
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