本を「読んだ端から忘れる人」が知らない記憶術 多読の法律家が見出した「忘れないコツ」

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わたしは、そもそも読書は勉強ではなく、楽しむものだと思っています。前提としては試験を受けるわけではないし、別に忘れてもいいと思って読んでいます。とはいえ、「なるほど」と深く腑に落ちた本を読んだ後は、(大概、カフェや電車の中で読むので)外に出て移動する時間、つまり歩いているときに頭の中で反すうするようにしています。

例えば、「作家の〇〇さんは、優れた作家の資質には3点あるといっていたな。1つめは〇〇で、2つめは△△で、3つめは××か……」みたいに、歩きながら頭の中でつぶやくのです。このように反すうすると、スラスラと3つ出てくる場合もありますし、「あれ? もう1つは何だっけ?」というように読んだ直後でも忘れている場合もあります。

読書後に振り返ることで記憶が定着しやすい

ここでのポイントは、歩いているため、すぐに本で確認できないということです。そうすると、歩きながらもう1つは何だったのかと、読んだ文章の文脈やストーリーを思い返しながら記憶をたどることになります。

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それで「ああ」と思い出せる場合もあり、そのときは「重要な3つは……」ともう一度、頭の中で確認するようにします。一方、思い出せない場合もあります。

そのときは、どうすればいいかというと、今度は本のことは忘れて重要なポイントを思い出そうとするのもやめて、「自分なら何を重要なポイントとして挙げるか?」と考えてみるのです。

そうすると、いろいろなアイデアが出てきます。そのときに、ふと「ああ」と答えが思い出せる場合もあります。もちろん、それでも思い出せない場合もあります。そのときは本を読める場所にたどり着いたら本を見て確認します。

こういう作業を読書の後に歩きながらすると、読んだ本の内容の記憶が定着しやすくなります。また、こうした重要なポイントは、仕事でそのまま実践できたり、課題を解決する要素になったりする場合があるので、しばらくしてから、やはり重要だなと思ったときには、そのポイントをスマホのノート機能にメモして保存してもいいでしょう。

木山 泰嗣 青山学院大学法学部教授(税法)

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きやま ひろつぐ / Hirotsugu Kiyama

1974年横浜生まれ。上智大学法学部法律学科を卒業後、2001年に旧司法試験に合格し、2003年に弁護士登録(第二東京弁護士会)。2015年4月から現職(大学教員に転身し、教育及び研究に専念)。著書に、『小説で読む民事訴訟法』(法学書院)、『憲法がしゃべった。』(すばる舎)、『反論する技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがあり、単著の合計は本書で58冊。

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