「不倫で番組降板」がアメリカではありえない訳 政治と芸能を「同価値に扱う日本人」の奇妙
同じようにずいぶん昔の差別的コメントを引っ張り出された映画監督のジェームズ・ガンも、謝罪をしたにもかかわらず、マーベルの『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』3作目の監督を降板させられた(しかし彼には多くの同情が寄せられ、しばらく時間が経った後にライバルのDCコミックの『ザ・スーサイド・スクワッド』の監督に起用されている)。
また、オバマ前大統領の側近を「猿」にたとえるという差別発言をツイートをし、謝りもしなかったコメディアンのロザンヌ・バーは、自身の名前を冠にしたコメディドラマ『Roseanne』を即座にクビにされた。
当時トップの視聴率を誇っていたのに、テレビ局ABCと親会社のディズニーは躊躇なく番組を打ち切ったのだ。その後、番組は、バーのキャラクターを死んだことにして、『ザ・コナーズ』とタイトルを変えて復活している。
差別はダメでも「不倫」には寛容なアメリカ
今やったことであれ、大昔の失敗であれ、ハリウッドのタレントは差別発言をしてしまったら、絶対に公に謝罪をしなければならない。一方で不倫で謝罪会見をすることは、まずない。
世間もそれを求めていないし、不倫したタレントが映画やテレビから降板させられることもない。事実、ジュリア・ロバーツやブラッド・ピット、アンジェリーナ・ジョリー、ベン・アフレックなど、不倫経験があることで知られるスターは今も大活躍している。
なぜ差別をした俳優は即座に解雇され、不倫はお咎めなしなのか。ロサンゼルス在住の映画ジャーナリストのジル・プリングさんは、「結局のところ、ハリウッドにとって一番大事なのはお金だからでは」という。
「人種差別発言をした俳優が出る映画は、興行成績にすぐ影響します。でも、不倫はそうではありません。それは実績として証明されています」と、プリングさん。たしかに、たとえば黒人に向けての差別発言をした場合、黒人はもとより、ほかの有色人種やリベラル志向の白人は、その俳優の映画を観に行かないだろう。
実はその映画を観たいと思っていた人も、周囲の目を恐れてやめるかもしれない。その割合は相当なものだ。さらに問題の俳優を雇い続けることで、そのスタジオは人種差別者を擁護していることになり、ほかの作品までボイコットされてしまう危険がある。映画を作るのには多額のお金がかかるのに、そんなことになっては台無しだ。
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