VWが出資した「中国大手電池メーカー」の正体 現地ではリチウムイオン電池の争奪戦が過熱
また、販路拡大とともに、生産能力の増強を進めている。2019年にEVパワートレインコントロールシステム工場(年産能力20万台)を建設し、唐山市電池工場の生産能力を既存の3GWhから10GWhへ引き上げたほか、柳州市には年産能力10ギガワット時電池の新工場を建設している。LIB生産能力は2020年に30GWh、2022年には50GWhに達する見通しだ。
さらに、国軒は価格競争力を維持するため、川上の部材生産にも取り組んでいる。ニッケルとコバルト鉱山の所有権を持つ中国冶金科工集団と合弁会社を設立し、2017年から年産4万トンの正極材前駆体を生産開始した。また、地場セパレーター大手の星源材質科技と合弁で正極材を生産し、LFP向け2万7000トン、LIB向け6000トンの生産能力を構築している。
国軒の李縝会長は「VWとの提携は弊社にとって大きなチャンスでもあり、大きなチャレンジでもある」と語った。中国LIB業界に差し迫る危機を感じる李氏が自社発展に大きな決意を下したと言えよう。
車載電池の争奪戦
2020年1~4月の中国LIB市場シェアを見ると、1位のCATLと2位のBYDの合算シェアは67%となり、市場の寡占化が進んでいることがわかる。新型コロナウイルスの影響で中国のNEVおよびLIB需要が大きく減少した。このまま行くと、経営状況が悪化した中堅・中小電池メーカーが大手電池メーカーや自動車メーカーなどに吸収される以外に生き残る道はない。
一方で、外資系メーカーがCATLやBYDとの資本提携をしにくい中、業界3番手以下の電池メーカーは次第に注目されるようになっている。ドイツのダイムラーは、中国7位のLIBメーカー、ファラシス・エナジー(孚能科技)が予定する新規株式公開に投資すると報道された。
2019年にはホンダとトヨタがそれぞれCATLと協業し、今年はトヨタがBYDと合弁企業を立ち上げた。またCATLから総額73億ユーロの電池調達を発表したドイツのBMWが、初のスポーツ多目的車(SUV)EV「iX3」を中国で生産し(年産能力4万台)、2021年には、EVセダン「i4」の中国生産を計画している。アメリカのEVメーカー・テスラは上海の「ギガファクトリー3」で第2工場の建設を行っており、CATLと電池供給も合意した。
外資系自動車メーカーの中国LIBメーカー頼りの姿勢が鮮明となり、今後、LIBを巡る各社の争奪戦が繰り広げられそうだ。
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