メガ損保決算で読み解くコロナ影響の深刻度 経済活動の停滞が直撃、海外保険金の増加も
同社では、2012年に買収したアメリカの保険会社デルファイがグループの資産運用を担っており、東京海上HDの総資産の約14%に当たる約4兆円を運用している。「平時には安定して年率5%の収益を上げており、リーマンショックのときは2%程度まで落ちた。今回のコロナが金融市場にとってリーマンショック以上になるかどうか。見方は分かれるところだ」(小宮CEO)という。
東京海上はグループの利益の約半分を海外で上げている。デルファイの資産運用次第で利益が大きく変動する可能性のあることが、業績予想を未定としている一因のようだ。MS&ADも、新型コロナによって資産運用による利益が国内外で600億円減少すると見込んでいる。
コロナ影響は国内より海外が大きい
3つ目は、新型コロナの感染者が発生することで、保険金の支払額がどれくらい膨らむかだ。3メガとも、保険金の支払額は国内より海外のほうが増えると見込んでいる。国内の個人向け保険では、旅行傷害保険や医療保険、所得補償保険などは、新型コロナによる入院や収入減などが補償の対象だが、日本国内の感染者や死亡者は欧米諸国よりも少なく、保険金の支払いはそれほど多くない。
一方、企業向け保険は、指定感染症である新型コロナによる損害は保険金の支払い対象外だったが、金融庁の要請を受けて、企業の休業損害や利益減少などを補償する一部の保険については新型コロナでも支払い対象としている。
ただ、こうした保険も、支払金額には上限があるうえ、新型コロナ感染者が発生した企業や事業所しか補償対象にならない。自治体などからの休業要請で事業を中断した場合は免責となり、現状では「支払額はそれほど多くはならない」(3メガ損保各社)という。
これに対し、3メガ損保が海外で引き受けている休業損害や利益減少を補償する保険、債務不履行などを補償する保険(取引信用保険)などは、新型コロナを支払い対象にしているケースが多い。東京海上はアメリカ子会社HCCやイギリスのキルンなどで、MS&ADもイギリスのMSアムリンなどがこうした保険を販売している。
その結果、2021年3月期だけでも東京海上で300億~400億円、MS&ADで200億円程度の保険金支払いが見込まれており、これが利益を押し下げる要因になっている。
一方、SOMPOは海外で保険金の支払額増加を織り込んでいない。新型コロナのマイナス影響として見込んでいるのは、金融市場の悪化による利息・配当金収入の減少や介護事業での職員の特別手当などの約170億円だけだ。しかし、仮に収入保険料が減少したり、海外の保険金支払いが増えれば、1500億円という当期純利益の予想は最大300億円落ち込む可能性があるという。
SOMPOの櫻田謙悟グループCEOは「今回の業績予想では、現時点で発生の蓋然性が高く、合理的に算出可能な影響額のみ織り込んだ。今後影響を見極めて、(11月の)中間決算の発表時点でより確かな予想を発表したい」と話す。
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