朝より「帰宅ラッシュ」が不安になる決定的理由 密接を招きかねない要因が電車内に存在する

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ところが、残念なことに密接になってしまう条件がある。それは夜のラッシュで、酔客が大勢乗る金曜日の終電間際の電車では、顔を真っ赤にした客同士が大声で会話をしている。こんな状況は、この時間帯の電車に乗ったことがある人なら覚えがあるだろう。

山手線では土曜日の夜にもラッシュがあり、渋谷や新宿から大勢の酔客が乗ってくる。緊急事態宣言の解除で利用者が戻るが、留意すべきは朝のラッシュよりも深夜のラッシュだろう。

これを踏まえると、緊急事態宣言で飲食店の営業時間の短縮に協力を求めたことが理にかなっているのかもしれないが、結果として多くの飲食店が経営危機の状況にある。

昔は、夜のラッシュ以外にも学生の下校ラッシュがすさまじく、かつては学生が大声で会話して騒がしかったが、現在はスマートフォンを操作して黙ってしまう学生ばかりとなった。3密の回避ではありがたいが、スマートフォンとソーシャルメディアの普及で学生同士が相互監視の関係にあり、生きづらい社会を自ら作り出しているのは気の毒だと思う。

新幹線・特急の3密

もう一つは、窓が固定されて開閉できない新幹線や特急列車の例で、お盆や正月のような超繁忙期でなければ通勤電車のようなラッシュは少ないが、繁忙期でなくても特定の列車に混雑が集中して立席が出る例はある。

先に夜のラッシュに触れたが、新幹線や特急列車でも、金曜日の夜の列車を中心に出張帰りに同僚と一杯やって騒いでいる姿を散見するが、ここでも「3密」が成立してしまう。

新幹線や特急の車両でも換気装置による換気は充実させており、座席の間隔を開ければ感染のリスクは避けられる。JR東日本では、停車駅の少ない列車で定員の約6割程度を上限に満席とする方針を打ち出したが、ソーシャルディスタンスの考えでは、この判断が現実で最適な答えとなるだろう。新幹線では3人がけの席と2人がけの席があり、3人がけの席の中央と2人がけの席の通路側をブロックし、発売しないイメージとすれば定員の約6割となる。感染リスクは大幅に減るが、収益も大幅に減る結果で、経営的には厳しいだろう。

緊急事態宣言の解除に関連して、東海道新幹線や東北・上越・北陸・秋田・山形新幹線、中央線・常磐線特急で定期運行の列車の削減予定を取り下げた。ガラガラだった列車に通勤・ビジネス輸送が戻れば「3密」となるかもしれないが、これも通勤輸送と似て出張需要の減少で「3密」を回避しているのが現状で、今後はある程度の輸送力を提供して「3密」を回避せざるをえない。

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