台湾が世界有数のマスク生産大国となった理由

日本に200万枚寄贈はなぜ可能になったのか

製造開始から1週間、2月16日に1台目のマスク製造機が完成した。「感慨深さとともに、充実感に満ちていた」と、許文憲TMBA理事長は笑顔で振り返る。

政府もこの頃から、マスクメーカーや軍、経済部の各部署などに呼びかけ、無名の英雄である「マスク国家チーム」が完成した。「マスク国家チーム」という呼び名がついて以降、マスク製造機の製造に携わった技術者全員は、このプロジェクトのために200%、300%の力を発揮していると激励を受けた。

そして3月5日、経済部が発注した60台のマスク製造機はすべて納品された。発注からわずか25日。国家チームが投入した技術者はのべ2200人以上にのぼる。この常識を超えた成果に、蔡英文総統も自ら現場に赴き、感謝を述べた。

しかし60ラインの増強だけではマスクの需要には追い付かず、行政院(内閣)はさらに9000万台湾ドル(約3億2000万円)を投じ、30台のマスク製造機と、それとは別に手術室などで使われるマスク製造機2台を発注。これらのマスク製造機は3月末に納品予定だったところ、約1000人の人材を投じたことで、予定より早い3月20日にすべて納品された。

マスクプロジェクトがもたらしたもの

このプロジェクトにおいて、TMBAの許理事長は予想外の成果も得たという。人材を派遣した企業はライバル同士であるはずなのに、マスクプロジェクトの下では一致団結し、使命を果たした。

マスク国家チームの働きにより、台湾の1日当たりのマスク生産量は世界第2位へと躍進した。だがマスク国家チームが台湾にもたらしたのは、マスクの生産力だけではない。業界が政府に協力したことが知られ、「工作機械とは何か」「工作機械産業がいかに重要か」ということを、社会に改めてアピールできたのだ。長年、同産業に従事した許理事長は「本当に意義のあるプロジェクトに携わることができた。この業界にいてよかった」と打ち明ける。

新型コロナウイルス流行前、アメリカと中国の貿易摩擦の影響を受け、台湾の工作機械業界全体が大きな痛手を負っていた。そこに新型コロナの流行があり、台湾経済も大打撃を受けた。しかし、許理事長はこのようにも考える。それは、マスク国家チームで見せた団結のように、コロナ危機は台湾の工作機械産業の転換期となる可能性があるということである。(台湾『今周刊』2020年4月30日)

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