年金開始「60歳vs.65歳」、受取り額逆転は何歳か 繰り上げ受給の「落とし穴」はいくつもある

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20歳から60歳までの40年間(480カ月)保険料を納めた場合、65歳からの老齢基礎年金は満額の78万1700円(2020年度の年額)となります。これを60歳0カ月で繰り上げ受給すると、54万7190円(30%減額)となる計算です。

20歳からで60歳までの40年分の納付期間がなく満額に達していない場合は、本来60歳から65歳までに、国民年金に任意加入して国民年金保険料(2020年度の月額は1万6540円)を納め、老齢基礎年金を増やすことができます。

しかし、繰り上げ受給をした人は、この任意加入をすることができなくなります。また、過去に経済的な理由から免除を受けた国民年金保険料について、本来10年以内であればさかのぼって納めること(追納)ができますが、繰り上げ受給を行うとこの追納ができません。

繰り上げ後、厚生年金加入によって退職後の老齢厚生年金を増やすことは可能ですが、老齢基礎年金については後で増やしたいと思っても増やせないことになります。将来のため年金を増やす、という点で制約を受けることになります。

病気が悪化しても、障害年金を請求できない恐れ

病気やケガが原因で障害が残った場合に受けられる障害年金には、障害基礎年金と障害厚生年金があります。障害年金は、原則として初診日(障害の原因となる病気やケガについて初めて医師の診療を受けた日)から1年6カ月経過した日(障害認定日)に、年金制度上の障害等級(障害基礎年金は障害の重いほうから1級、2級があり、障害厚生年金は1級、2級、2級より軽い3級がある)に該当し、その他の要件を満たせば受給可能です。

この障害認定日時点で病状が軽く障害等級に該当しなくても、その後、悪化して障害等級に該当するようになった場合は本来65歳前まで(65歳の誕生日の前々日まで)に障害年金を請求して、受給することができます。1年6カ月経過後に悪化した場合の障害年金の請求を「事後重症による請求」といいます。

しかし老齢年金を繰り上げ受給すると、65歳前であったとしても、事後重症による障害年金の請求ができなくなってしまいます。障害年金は障害等級2級の障害基礎年金であれば78万1700円(2020年度の年額)になります。一方、老齢基礎年金の満額は、先ほど述べたとおり78万1700円となります。78万1700円から繰り上げ減額された老齢基礎年金と比べて、2級の障害基礎年金は減額されずに、しかも非課税で受給できます。

この2つの年金だけで比べると、障害基礎年金が金額的に有利ですし、老齢年金を繰り上げると高い金額の障害年金が受け取れないということにもなります。したがって、持病のある人などは繰り上げに当たって注意が必要です。

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