「菌活」で免疫力アップ!キノコが異例の品薄 コロナで需要増えスーパーでは引っ張りだこ

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エリンギブナピーブナシメジの主力3品は1パック100グラム入り98円(税抜き、以下同)と、100円を切る値段で4月18日まで売られていた。ところが、21日は1パック128円と、30円も価格が跳ね上がっていた。オリジナル品の「霜降りひらたけ」は158円と据え置き。霜降りひらたけの場合、隣駅の武蔵小杉駅前にあるイトーヨーカドーが178円、東急ストアが198円で販売していたので、店頭価格には開きがある。

マルエツや東急ストアには、ホクト製品のエリンギとブナシメジの主力100グラム入りパックが並んでおらず、生産農家と契約したキノコ類が売られていた。イトーヨーカドーのキノコ類の陳列棚を見ると、生産農家の顔が見えるブランドの占める比率が高い。

つまり供給ブランドが多様化する現象が起きている。4月上旬より下旬になるにつれ、ホクト製品が通常より品薄に拍車がかかると、ホクト以外のキノコ生産業者がじわり都心部で売れ行きを伸ばす、という構図なのだ。

ちなみにマイタケは、TVの情報番組で取りあげられる機会が多い人気商品だ。マイタケもホクトの主力品だが、首都圏では、市場シェア5割を超える「雪国まいたけ」が棚の多くを占めるなど優位。JA全農長野は、「信州のチカラ」ブランドのブナシメジで売り場を確保し、健闘が目立つ。

また、生シイタケはホクトが最新鋭の専用大規模工場から出荷する新商品「生どんこ」を2018年秋に投入したが、生産農家が多岐にわたって出荷する既存品との優位性が十分に訴求できず苦戦ぎみだ。キノコ業界においては、企業規模で追随を許さないホクト一強という構図でもなく、ホクトは売り場を確保するため、地道な営業活動を日々積み重ねている。

生産現場ではハイテク化と手作業を両立

ホクトの森正博・専務営業本部長はこう語る。「巣ごもり消費がどこまで影響しているかわからない。スーパーから話をもらっても、量的にすぐに増やせるものではない。新型コロナ感染防止に注意を払いながら、配送はそれぞれの現場で精いっぱい対応している」。

生育中のエリンギ。主力3品の一角を占める(写真:ホクト)

生産現場の供給体制に新型コロナの影響は波及していないか、懸念されるが、 コンテナに菌床を敷き詰めてライン生産をするなどハイテク化されてり、支障はなさそうだ。ロボット導入によって出荷に向かないキノコを間引きする芽摘み作業も大幅に省力化された。それでもエリンギはトレーに並べる手作業が残る。1日4回検温とマスク消毒を徹底するなど、ライン休止とならないよう対策を講じている。

また本社では、管理栄養士など8名で構成される営業企画部がネットを利活用したマーケティングを展開し、巣ごもり消費を喚起する。自社のHPを活用した動画付きのレシピ提案や、「きのこらぼ」というコミュニティサイトを通じた専門知識の啓蒙といった内容だ。

7年前からホクトは、通年で安定的にキノコを消費する食習慣キャンペーン「菌活プロジェクト」に対し、年10数億円の広告宣伝費と販促費を投入。この蓄積を基に、料理人や編集プロダクションと連携しながら、コンテンツを充実・強化してきた。現在、競合する雪国まいたけのサイトと比べると、質量ともホクトが圧倒していることがわかる。「免疫力でキーワード検索をした人によるHPへの流入が一気に増えた」(森専務)。

生鮮食料品のキノコ類は特定保健用食品ではない。パッケージや店頭POPで健康増進を直接訴求するメッセージは打ち出せない。それでも新型コロナウイルスに感染しないよう、栄養豊富な食材選びをする消費者は、ネットやTVの関連情報を熱心に探り出す。今まさにキノコ類は、ヨーグルトや納豆、バナナやイチゴなどの果物と同じく、免疫力を高める食材として認知されている。本来なら不需要期の5月から8月にかけても、新型コロナの感染防止に加え、夏バテに効くという観点も加わる。消費者からの旺盛な需要は、例年を上回る勢いで推移しており、当分収まりそうにない。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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