現役の「ひきこもり」940人調査で判明した実態 かつてない大規模調査で見えたこと

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また、自分がひきこもりだと思う理由について、4割が「通学・就労していないから」と答えている。また、9割以上が「現在も生きづらさを感じる」と答えている。

一方、「生きづらさが何によって解消したのか」という問い(複数回答)に対し、最も多かった回答が「安心できる居場所が見つかったとき」で42.2%だった。

以下、「こころの不調や病気が改善したとき」(41.4%)、「自己肯定感を獲得したとき」(37.9%)と続いた。「就職したとき」は13.2%と、最も低かった。

ひきこもり当事者が語る生きづらさは、就職によって改善されるとはかぎらないことがわかる。

松山大学の石川良子准教授は「今回の調査の一番の成果は、これまで語れなかった人たちの声を多く集めたことにある」と指摘したうえで、次のように語る。

「集まった940人の声をどう活かすのか。単に支援のあり方を変えるだけにとどまってしまっては、『働いて稼げてこそ一人前の大人である』『ひきこもる人は弱い人たちで、支援される対象なんだ』という今の社会の価値観を維持することになってしまう」。

ひきこもり開始、22歳が最多

ひきこもりは、えてして不登校の延長また並列するものと扱われることも多い。

ところが、今回の調査結果をみると、「現在もひきこもりである」と回答した当事者が最後に在籍した学校は「大学」が39.4%と最も多く、「短大」(6.9%)「大学院」(2.5%)と合わせると、半数近くが高等教育機関へ進学後にひきこもりになっていることがわかる。また、ひきこもり開始年齢は「22歳」がもっとも多かった。

また、ひきこもり期間の平均を年代ごとに見ていくと、年代が上がるごとに長期化する傾向が見られた。10代の平均は2.5年だが、60代になると22.3年だった。

(東京編集局・小熊広宣)

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また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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