今なお船内にいる「クルーズ船乗組員」の悪夢 何千人もが帰国手段なく取り残されている

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クルーズ船各社は3月半ばに運航を中止した。しかし、その決定が下されたときには何十隻もの船が依然として航行中だった。多くがクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」でウイルス感染が爆発的に拡大してから出航した船だ。ダイヤモンド・プリンセスでは、少なくとも700人が症状を訴え、9人が船旅の途中に日本の沖合で死亡した。

他の船に乗船している人々も次々に病気になり、数名の乗客が洋上で死亡している。

下船を許されたのは乗客だけ

何隻もの船がいくつもの国際港で停泊を拒否され、フロリダとカリフォルニアの港に避難してきた。だが、たいていの場合、そこで下船を許されたのは乗客だけだ。

ほとんどの船は、料金を支払っている乗客を下船させた後、沖合に戻った。クルーズ会社は、何万人もの従業員の帰宅方法を探すのに苦労している。CDCは先週、クルーズ会社に対してアメリカ領海での航行禁止令を発令し、避難した乗組員や乗客の民間航空機での移動も禁止した。

船内の乗組員の一部は取材に応じ、待機中は給料の支払いがなく、ウイルスが船内にとどまっていることに多くの乗組員が恐怖を感じていると語った。

「安全な環境ではない」と、ホーランド・アメリカ・ラインのクルーズ船に乗船している厨房担当者は述べた。彼は、メディアに話をすれば会社の方針に反するとし、匿名を条件に取材に応じた。「いま私たちの全員が恐怖の中にいる」。

CDCは乗客と乗組員を乗せて航行を続けているクルーズ会社に、感染の防止策や緩和策、対応策を提示するよう求めていると述べた。

「クルーズ船によりウイルスが持ち込まれ、感染拡大が続くおそれがある。CDC所長がそう確信しているのには理由がある」と、CDCで広報を担当するスコット・ポーリーは話した。「クルーズ船業界が深刻な症状のある乗組員に必要な医療支援を提供するよう、CDCはこれらの船を監視し、クルーズ会社と協働している」

パームビーチ沖合のあるクルーズ船ではフィリピン人400人が4週間も留め置かれている、とフロリダ州のフィリピン名誉領事、ヘンリー・ボーランド・ハワードは話す。

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