韓国サムスン、「TV用液晶から撤退」の背景事情 中国勢が席巻、代わりに大型有機ELで攻勢

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また日本や台湾のパネルメーカーに有機ELへの投資余力がないとはいえ、液晶パネルで価格破壊を起こした中国政府の補助金は健在で、すでにBOEも有機ELの生産を開始しているほか、エバーディスプレイのような専業メーカーも登場している。サムスンはQD有機ELで、テレビ向け有機ELで先行するLGと差別化し、液晶パネルで価格決定権を握る中国勢を引き離せるかが今後の焦点となる。

液晶パネルの生産からは撤退するが、サムスンは引き続き液晶テレビの製造販売を続ける。液晶パネル事業と異なり、同社はテレビの販売台数で世界1位。シェアは約2割だ。家電事業はスマホや半導体、ディスプレイとならぶ同社の4大事業の一角で、テレビはその主要製品である。

すでにサムスンは液晶パネル事業の採算悪化にともなう生産調整で、自社の液晶テレビに使用するパネルを一部外部調達してきた。液晶パネルからの撤退後は、自らを蹴落としたBOEや台湾メーカーなどからの調達量を増やしていくとみられる。

パネル価格安定への期待も浮上

LGも、液晶パネルの生産ラインを順次停止して有機ELへシフトしていく方針だ。その結果、供給過剰が緩和され、「新型コロナウイルスの影響はあるものの、2020年は(パネル)価格がある程度安定するだろう」(日系ディスプレイメーカー幹部)と期待する声もある。

日本ではシャープの持ち分法適用会社で大型液晶を製造する堺ディスプレイプロダクト(SDP)がパネル価格の下落で業績が悪化している。研究開発費など手元資金を確保するために、シャープは液晶事業の分社化や上場などを検討しているが、SDPの子会社化の計画を見送っている状況だ。

科技網(デジタイムズ)など複数の台湾メディアによると、サムスンはシャープから液晶パネルの供給を受ける方向で調整していると報じている。撤退によって不足する液晶パネルをシャープからも調達するための動きのようだ。

またシャープは台湾の鴻海精密工業傘下になった2016年以降、サムスンへの液晶パネル供給を停止したとされる。サムスンは2017年、シャープなどを相手取り、供給停止で損害を被ったとして損害賠償請求するなどシャープとは因縁がある。

シャープや中国勢が次にどう動くのか。かつての王者の撤退は中国メーカーが席巻する液晶パネル業界に次なる波紋を起こしそうだ。

劉 彦甫 東洋経済 記者

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りゅう いぇんふ / Yenfu LIU

解説部記者。台湾・中台関係を中心に国際政治やマクロ経済が専門。1994年台湾台北市生まれ、客家系。長崎県立佐世保南高校、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了、修士(ジャーナリズム)。日本の台湾認識・言説を研究している。日本台湾教育支援研究者ネットワーク(SNET台湾)特別研究員。ピアノや旅行、映画・アニメが好き。

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