おせちの中に世相が見える、戦略が見える!《それゆけ!カナモリさん》

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■百貨店各社の傾向とオススメの切り口は?

 ここから先はかなり長いので、時間のあるときに読んでほしいのだが、日本全国各百貨店の展開をサイトで見てみる。題して列島横断おせちマラソン。ざっくりとした感想しか載せていないので、詳しくは、百貨店名におせち料理サイトのリンクを設定したので、そちらを参照いただきたい。

三越
 「キッズおせち」「ピンチョスおせち」「身の回りの素材でお正月を楽しく演出する方法」など、届いたおせちを「より楽しく」「より便利に」食べる工夫もあわせて提案して、おせちの2次利用を提案しているのが秀逸だ。そして、「そもそも“おせち”ってなんだ?」という「おせちに興味がなかった層」を取り込む工夫もちらり。成長市場では需要喚起、需要創造が欠かせないが、その鉄則をきちんとおさえた展開である。

大丸
 「セレクトおせちであれこれ食べたい人のさらなる欲望を満たす!」がオススメと見た。人数や好みに合わせてお重を組み合わせられるのだ。セレクトはめんどい人には、あらかじめ有名店を合体させたおすすめおせちもあり、両面作戦を展開している。また、「一人暮らしだけど、実家には帰りたくない…彼氏と一緒にお正月!」 な女子向けと思われるスイ-ツ付きおせちもあり、なかなか細かなニーズを拾うことも忘れていない。

阪神
 あああ、やっぱり……。という感じの「タイガースおせち」はホームとアウェー用のお重2色展開。たぶんタイガースファンは色違いで購入するに違いない。また、関西のとんかつチェーン「とんかつKYK」のおせちがあるなど、土着的雰囲気バッチリな展開だ。

伊勢丹
 高い。伊勢丹独自の価値を訴求する「オンリーi」をおせちで展開するとこうなるのか。京都下鴨茶寮のおせち取り扱いは伊勢丹と東急だけ。10万のは伊勢丹だけ。関西発祥ではないのに、大丸・高島屋・阪急を差し置いて、伊勢丹が専売。伊勢丹バイヤーは「いいものを一人勝ちで売る為には、ジャングルも戦場もかき分けて行く」らしいので、「孔明の家」にも3回行ったのだろう。下鴨茶寮が口説き落とされた様子も目に浮かぶ。

阪急
 伊勢丹とは正反対の攻め方だ。老舗ではなく、若手起用。京都では今「お高くとまった殿様商売の京料理店」に反旗を翻した若手料理人たちが「美味しい物を、まっとうな価格で」提供するきざしがあるという。伝統を守りつつ革新的で、価格は良心的。そんな若手達の店はこの不景気の中でも、何カ月も予約が取れなかったりする人気店になっている。そんなお店におせちをつくってもらっているのが阪急。人気を反映して売り切れも多い。

高島屋
 20万オーバーのおせちがあるのはここだけではないか。4人家族が食べたら一回で終わり。送料はなぜか1万のおせちも20万のおせちも300円。とこんな細かい所が気になる筆者のような者がターゲットでないことだけは確か。あぁぁすごい強気。

そごう/西武
 プロモーション的にすごく損していると思う。「そごう おせち」「おせち 西武」と、単体で検索すると順位がだいぶ低い。正解は「そごう・西武 おせち」なのだけど、各々の百貨店の顧客は「そごう・西武」と認識していないだろう。

 しかも、サイトの写真をみても、ショッピング画面にいけないのだ。「店頭か電話で注文」ですぜ。商品的には「おばあちゃんのおせち」シリーズなど、面白い企画もあるのだが、プロモーションと連動しておらず。残念。

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