楽天が「送料無料化」めぐり混迷を極めた背景 ユニオンと友の会が対立、公取の判断は…
「世界中がアマゾンの箱で埋め尽くされる」という三木谷氏の問題意識も正しい。楽天との力の差が歴然としているわけで、どうやってしぶとく生き残っていくかを考えざるをえないからだ。
そういう意味では、送料無料化というわかりやすさを打ち出すことについてこれない「弱い」出店者を切って、優良な出店者だけでやっていきたいという三木谷氏の狙いは理解はできる。
ただ、拙速すぎる点もいくつかあった。ユニオンの言い分にもあるように、規約を突然変更し、出店者側の負担が増すことをなかば押し付けたこと。「送料無料ライン」という施策の呼称を公取対策もあり「送料込みライン」と言いかえても後の祭りだったこと。これでは、支持を十全に得られない。
公取がどのような判断を下すのか
楽天は5月に改めて方針を打ち出す見込みだ。ここで公取が強く規制する姿勢を見せれば、ただでさえ対アマゾンで“弱者”の楽天には打撃となり、EC市場での地位はますます低下する。近年は欧州を皮切りにGAFA規制の動きが強まっているが、公取が身を乗り出すほど、国内企業として成長途上の楽天のような「弱者」を結果的にたたくことになりかねない。
楽天ユニオンは年内をメドに、楽天だけでなくアマゾンやヤフーなどほかのプラットフォーマーも対象とした出店者による協同組合を立ち上げるとしている。公取の判断いかんによっては、プラットフォーマー側が規約変更することは出店者の完全な同意がなければ不可能になるという懸念もある。どこまで踏みこんだ判断を公取がするのか注目だ。
近代までの領主による分割統治の狙いは被支配者同士を争わせ、矛先が統治者に向かないようにすることにあった。ただ領主であったはずの楽天も、公取やアマゾンなどと戦っていかなければならない状況に追い詰められている。
三木谷氏が何が何でも実施すると意気込んでいた送料無料化。ここでつまずいてしまった楽天は難しい判断を迫られている。
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