楽天が「送料無料化」めぐり混迷を極めた背景 ユニオンと友の会が対立、公取の判断は…
「まるで農園領主の分割統治だ。出店業者を賛成派と反対派に分けて争わせている」――。
楽天が運営するECサイト「楽天市場」に出店する、東京の雑貨店の男性は楽天の送料一律無料化への不満をぶちまけた。この男性は、希望しない店舗などを除いて3月18日から始まった送料無料化に合わせて、数万点もある在庫商品の値段設定を調整するため、忙殺されたという。
「人手も商品管理の知識もある店舗はいいのかもしれませんが、人手不足のうちなんて休日返上で大変でしたよ」
現時点では、店舗側に送料を無料にするかどうかの選択権がある。とはいえ、楽天は一律無料化実施の姿勢を崩しておらず、それに反対する店舗との対立は収まっていない。
送料一律無料化が公取巻き込む騒動に
楽天が、約5万店舗に及ぶとされる出店業者に1回の合計購入金額が税込3980円以上の場合、送料一律無料化を求めたのは2019年1月のことだった。世界最大のECサイト、アマゾンに対抗する必要性を打ち出したが、出店業者側の一部は送料分が店側の負担になるとして反対。
彼らは昨年9月に任意団体「楽天ユニオン」を結成し、今年1月に送料一律無料化が独占禁止法の「優越的地位の濫用」にあたるとして、公正取引委員会に調査を依頼した。公取側もこれに反応し、2月10日に楽天に立ち入り調査をかけている。
それでも楽天側が3月18日に送料一律無料化を強行する姿勢を見せたため、2月28日に公取側が東京地裁に対し、送料一律無料化に対する緊急停止命令を申し立てた。その後、楽天に賛成する優良店舗からなる任意団体「楽天 友の会」が会見を開き、送料一律無料化の必要性を訴えた。
この直後、楽天側は「新型コロナウイルスの感染拡大による人手不足で店舗の送料無料化への対応が遅れる可能性がある」として送料一律無料化を延期し、5月に改めて方針を打ち出すとした。これを受け、公取も3月10日に申し立てを取り下げ、事態はいったん落ち着きを見せている。
今回の送料一律無料化をめぐり、一般消費者の関心を引いたのは、楽天への賛成派、反対派の対立構図がわかりやすかったことだろう。取材や会見で見えたそれぞれの意見はこうだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら