「電動車いす」のニーズが障害者に限らない真因 車いすを自動運転化したベンチャーの挑戦

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前進後退・左右は、右側のスティックで行う。握る部分が大きいので、スティック(棒)というより、マウスっぽい。そのマウスを操作すれば、その通りに動くのだ。

ルックスがスタイリッシュというだけでなく、段差や上り坂に強く、しかも小回りも利く。それでいて操作も簡単。価格は、最新のWHILL Model Cで45万円。介護保険レンタルなら月額約3000円。2014年の初期モデルの発売開始から、これまですでに1万台近くを販売してきたという人気も納得の内容だ。

前後に進むだけでなく、その場でのターンもきれいに決めることができる。実際にWHILL Model Cのオーナーに、ダンスのような華麗な動きを見せてもらえた。手首が動く人ならば、操作が難しいと感じることはないだろう。

電動車いす+自動運転で何ができる?

WHILLは、2018年9月に約50億円の資金調達を発表した際、「今後はMaaS事業成長を目標にする」とアナウンスした。そして、翌2019年1月にラスベガスで開催された「CES2019」において、電動車いすに自動運転機能を備えた「WHILL自動運転システム」を発表。2月からは、さまざまな実証実験をスタートさせている。

最初の実証実験は、三菱電機株式会社と株式会社Liquidと組んで行われたもので、エレベーターと建物のセキュリティーシステムの連携を図るもの。

左右のアーム部に設置された2つのカメラと後方を監視するセンサー、通信機器を組み合わせることで自動運転を実現(写真:WHILL)

スマートフォンで呼べば、無人のWHILL自動運転システムが、エレベーターを使ってやってくる。さらに、建物のセキュリティーエリアの内外を、セキュリティーシステムと連携して、WHILL自動運転システムが自由に出入りするという実証実験であった。

また、同じ2019年2月には神奈川県横浜市みなとみらい地区で、シェアリングの実証実験を実施。さらに5月になって、オランダのアムステルダム・スキポール空港での自動運転システムの実証実験を開始している。これは、空港内でシェアリングとして貸し出されたWHILL自動運転システムが、ユーザーの利用後に、無人で貸し出した場所まで戻ってくるというものだ。

なぜ、空港に電動車いすのシェアリングが必要になるのか。また、なぜ、その電動車いすに自動運転機能が必要なのかというのが、ポイントだろう。

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