東出昌大の謝罪会見に見えた慢心と聡明の矛盾

「お答えできない」連発は本当に失敗だったか

余談ですが東出さんは、歴史、将棋、落語などに精通し、専門番組やドキュメンタリーへの出演も多いなど、インテリとしての一面を持つ俳優でした。この日の会見でも言葉づかいの1つ1つに間違いはなく、俳優としての評価とは別に、聡明なイメージを持つ業界人が多かったのです。しかし、そんな聡明なイメージの人でも、「幼い子どもがいながら3年間も不倫をしてしまう」という愚行に陥ってしまいました。ここにビジネスパーソンにも通じる成功者ならではの落とし穴を感じてしまうのです。

この日の会見で東出昌大が犯した唯一のミス

東出さんは囲み会見の終盤、今後の仕事に言及しました。「今後の仕事のことは今の私の口からは申し上げられません。ですが、今後生きていくうえで、1日1日を、最善を尽くしていこうと固く思っています」と、自身に仕事を語る資格はなく、「人間としてどう生きていくか」に焦点を当てていることを明かしたのです。このコメントも謝罪の場としては最善と言っていいでしょう。

しかし、質問を続ける記者に、つい本音が漏れてしまいました。「役がある限り、役を全うしたい。今後の仕事のことは申し上げられませんが、1つ1つあるのであれば、その1つ1つが『最後なのではないか』と気概を持ちたい」という意欲や希望を語ってしまったのです。謝罪の場としては蛇足どころかマイナスイメージであり、この日に東出さんが犯した唯一のミスでした。

その後、「今、自分自身にかける言葉はあるか?」と聞かれたときも、東出さんは涙をこらえるような顔で、「『人を裏切らず、最善を尽くして生きろ』と自身に対して思います」とコメントしました。記者は後悔の念を抱かせ、泣かせようとしたものの、東出さんは「謝罪の場では絶対に泣いてはいけない」というセオリーを守るように涙をこらえられたのです。

話し終えて退場しかけた東出さんはふと足を止め、「今後、何かが決まりましたらどのような形かわかりませんが、必ずご報告させていただきます。私の口から言えたことではないのですが、妻と小さな子どもたちのことは静かに見守ってあげてください。本日はありがとうございました」と頭を下げて退場しました。最後まで「『妻子がすべて』という姿勢を貫けた」と言っていいでしょう。

東出さんの会見を見た人々が「人ごとのよう」「はぐらかしていた」などの声をあげ、さらに情報番組の街頭インタビューでは「棒読み」「台本があったのでは?」という酷評もありましたが、これらは正しいのでしょうか。

「人ごとのよう」「はぐらかしていた」ように見えたのは、「相当悪いことをした男」という前提に加えて、もともと東出さんが感情の伝わりにくい話し方をするタイプの人だから。事実、表情の変化や声の抑揚が少ないことは、俳優として演じるときにもしばしば言われてきたことでもあります。

次ページ会見と俳優としての姿にあまり差が見えないワケ
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