試合前に飲んだ風邪薬がドーピングになる理由

どの薬が禁止対象になるか事前確認が大切だ

では、実際にはどんな薬物や方法が、禁止の対象となっているのでしょうか?

禁止物質および禁止方法は、WADAが策定する禁止表国際基準(禁止表)に定められています。科学や医療が進歩するとともに、ドーピングに使われる薬物の種類や方法も変化するため、禁止表は毎年改訂されています。それゆえ選手やコーチたちは、つねに最新情報を収集しておく必要があるのです。

禁止物質および禁止方法は3つに分類

具体的に、禁止物質および禁止方法は、次の3つに分類されています。

(1)つねに禁止される物質と方法(競技会検査、競技会外検査含む)
(2)競技会検査において禁止される物質と方法
(3)特定の競技において禁止される物質
松本秀男(まつもと ひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

(2)の競技会中は、中枢神経を刺激して敏捷性や競争心を高める「興奮薬」や、陶酔感、多幸感、高揚感をもたらす「麻薬」「カンナビノイド」、エネルギー代謝を活性化させる「糖質コルチコイド」(ステロイド)などが禁止されます。

(1)の競技会中、競技会外を通してつねに禁止されるものには、上記のほか、筋肉増強剤である「タンパク同化薬」、交感神経興奮作用やタンパク同化作用をもつ「ベータ2作用薬」、女性ホルモンを低下させたりタンパク合成を促進したりする「ホルモン調節薬および代謝調節薬」、禁止薬物の検出を逃れるために尿量を増加させる「利尿薬」などがあげられます。

そのほか、禁止される方法として、血液あるいは血液成分を物理的・化学的手段を用いて血管内に戻したり、ドーピング検査のために採取した尿をすり替えたり、タンパク分解酵素などを加えて尿を改質したりすることも禁止されています。さらに、最近の新たな手法である、遺伝子および細胞のドーピングについても禁止事項となっています。

(3)の特定の競技だけで禁止されるものとしては、例えばアーチェリーや射撃などの標的を狙う競技において、交感神経を遮断して不安や緊張をとる「ベータ遮断薬」が禁止されています。

禁止表(日本語版)最新版は、JADAのホームページで見ることができます。

これからも健全なスポーツが発展するよう、卑怯(ひきょう)で危険なドーピングは排除していかなくてはなりません。スポーツを愛するすべての人たちが、アンチ・ドーピングに対して高い意識をもつことが大切だといえるでしょう。

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