FRBが再度利下げをしたら株価はどうなるのか いったん下げ止まっても長続きしない?

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ジェローム・パウエルFRB議長は声明発表後の会見で、3月17-18日に開催される次回のFOMCで追加利下げを打ち出す可能性も否定しなかった。こうした期待が改めて相場の下支えとなることも考えられよう。一方でドナルド・トランプ大統領は民主党の上下院に対し、新たな所得税減税を行うにあたっての協力を要請した。緊急事態を受けて民主党も大統領に協力する可能性は十分に高く、こちらに対する期待が足元で買いを呼び込むことも考えられる。

利下げ余地が限られることが、新たな懸念材料に

とはいうものの、仮に18日に0.25%の利下げを行ったとすれば、短期の政策金利水準は1.0%を割り込むことになる。将来的な利下げ余地が限られるようになる中、このままさらに経済が悪化した場合にはFRBの打つ手段がほとんど残らなくなるとの懸念が高まる可能性もあり、やはり相場の下支えとなる可能性はそれほど高くないと言わざるを得ない。

それでもFRBがさらなる利下げを打ち出し、議会の協力を得てトランプ政権が所得税減税をまとめることが出来れば、株価が底なし沼に沈んでしまうような状況は避けられるかもしれない。また新型肺炎の感染拡大が限定的なものにとどまるなら、やはり市場心理も上向くことになるだろう。うまくいけば、今月後半あたりにはいったん株価も下げ止まるのではないか。

ただし、中央銀行の金融緩和や減税などの財政出動によって食い止めることが出来るのは、あくまでも需要の減少によって生じる景気の落ち込みであることも忘れてはならない。中国で長期間に渡って向上や企業が閉鎖され、生産活動が停止してしまったことによる供給不足の影響は、この先徐々に出てくることになる。仮に感染の拡大が収束に向かい、企業活動が再開したとしても、それまでの落ち込みをカバーするために生産のペースを2倍に上げることは不可能だ。今のところは在庫を食いつぶす形で何とか経済は回っているが、いずれ在庫も底を打ち、供給不足が深刻な問題となってくるはずだ。

もし供給不足深刻になれば生産コストが上昇、いわゆるコスト・プッシュ型の悪いインフレ圧力が強まってくることになる。こうした動きはいったん加速し始めると手がつけられなくなることも多く、最終的には景気が減速する中にもかかわらず物価が上昇してしまうスタグフレーションという最悪の状態に陥る恐れもかなり高いと見ておくべきだ。

中国の生産活動の空白を埋めることができず、夏にかけてコスト・プッシュ型のインフレ圧力fが高まってくれば、FRBも景気のために追加緩和を続けるというわけにも行かなくなってくるし、場合によっては利上げに転じざるを得なくなる可能性もゼロではない。その場合には、株価も直近の高値から10%や15%といった下落では済まなくなることがあっても、何ら不思議ではない。

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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