「昭和の時代劇」悪役・アウトローの圧倒的魅力

1970年代のベスト3作品は何が面白かったか

紋次郎の強力なライバルとして登場したのが、闇の世界の殺し屋たちを主人公にした「必殺」シリーズ(朝日放送)である。1975年の「必殺必中仕事屋稼業」はその第5弾であった。

元締めである飛脚問屋の女主・おせい(草笛光子)の依頼を受けて、蕎麦屋の半兵衛(緒形拳)と元武家の遊び人・政吉(林隆三)が、悪人たちを始末する。それまでの「必殺」と大きく違うのは、2人が博打好きのダメ男で、殺しについてはやたらアマチュアっぽいところだった。

シリーズ第1弾「必殺仕掛人」では鍼医の藤枝梅安(緒形拳)が、狙った相手の急所に平然と鍼を突き刺し、第2弾「必殺仕置人」では奉行所同心の中村主水(藤田まこと)が無表情のまま暗がりでぶすりとやる。どちらもプロの技だった。ところが、半兵衛も政吉も殺しの現場では焦りまくり、しばしばミスもする。人を殺し、女を食い物にする悪の親玉のほうが断然強そうなのである。この緊張感が魅力だった。

実際、時代劇を面白くするのは強烈な悪人だ。「必殺」シリーズには天知茂、三國連太郎、中尾彬らが悪役で出演。彼らが見せるダークな顔は人々をビビらせた。「仕事屋稼業」の最終回では、私が愛する政吉を拷問した挙句、死に追いやった奉行所同心役の大木実の「悪」ぶりは酷かった! 後にまったく別の時代劇で大木実ご本人のインタビューを引き受けた私は、「仕事屋稼業の最終回で泣かされました」と、つい告白し、心優しき名優(ホントにいい方だった)を困惑させたのであった。

近年の時代劇にいちばん足りないのは、ガツンと迫力のある悪役だということはよく言われる。過激な場面を放送するのは難しくなっているから、悪の顔を作りにくいのもよくわかる。しかし、時代劇はバッサバッサと悪を成敗するのがヒーローと称えられる。現実離れしているからこそ成り立ってきたのだ。「必殺」で人気を得た藤田まことも時代劇の危機を感じ、晩年自ら提案して「世直し順庵!人情剣」(時代劇専門チャンネル3月放送)で密かに悪人を成敗する医師を演じた。現在、「必殺」シリーズは東山紀之らに引き継がれているが、視聴者の期待に応える「悪」を造形できるかが勝負どころだろう。

「忍者」と「盗賊」が時代劇をザワつかせる

「忍者」と「盗賊」も、時代劇ならではのキャラクターとして長く人気を博してきた。昨年亡くなった神先頌尚さん(元東映太秦映像社長)は、「水戸黄門」「大岡越前」などナショナル劇場(TBS)の長寿シリーズを手がけた名プロデューサーだった。その神先さんが「忘れられない」と語ってくれたのは、1967~68年放送の「仮面の忍者 赤影」(関西テレビ)だった。

横山光輝原作のマンガをドラマ化した子ども向け番組だが、テレビドラマに慣れていないスタッフは映画と同じ手間と時間をかけて凝った撮影を繰り返す。出演者も赤影役の坂口祐三郎はじめ、映画で鍛えられたベテランが多い。特に敵方忍者には、原健策、汐路章、天津敏、舟橋元(前述した「新選組血風録」では近藤勇役)など名悪役たちが本気でお茶の間の子どもたちを怖がらせる。最後には巨大な怪獣やUFOまで飛び出して、完全に予算オーバー。だが、それだけに素晴らしい内容で大人気となり、今も多くのファンを持つ。

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