JR九州、独特な「鉄道デザイン」はどこへ向かう? クラシックな豪華さにこだわるが、今後は…

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787系に続いて登場した883系(ソニック)、885系(かもめ・ソニック)といった特急車両も同様だ。

メタル調の壁面が特徴の883系デッキ部分(記者撮影)

883系は近未来的なメタル調の壁面、ミッキーマウスの頭のような形のシートが、885系は黒革張りのシートや木の床、四角ではなく丸形のテーブルが特徴だ。そして、883系の運転席が見えるパノラマキャビン、885系のデッキを利用したアートギャラリーが旅情をそそる。

885系の客室は皮張りシート(記者撮影)

青柳社長は、「一時期は特急列車が観光列車だと考えていたこともある」と明かす。博多―由布院・別府間を走る特急「ゆふいんの森」として運行するキハ71系、キハ72系気動車も、長距離を走る特急列車でありながら、リゾート感あふれる内装が特徴だ。どちらの車両も従来の車両とはデザインや素材を変えることで快適性を高め、ワンポイントで観光気分を盛り上げるという点で共通している。

特急列車が観光列車という戦略を変えたきっかけが新幹線800系の登場だ。2004年の新八代―鹿児島中央間運行開始に合わせ、JR九州は鹿児島中央―吉松間に「はやとの風」を投入するとともに、人吉―吉松間にも「いさぶろう・しんぺい」の専用車両を投入。都市間の移動は新幹線、ローカル線を乗り継ぐのは観光列車という組み合わせで新たな旅のスタイルを生み出した。

クラシックな豪華さへ

いさぶろう・しんぺい、はやとの風ともに古い気動車を改造したものだが、内装はななつ星にも通じる、木材を多用したクラシックな雰囲気だ。

JR九州「或る列車」の車内。豪華なクラシックデザインだ(撮影:今井康一)

その後、「SL人吉」「海幸山幸」「指宿のたまて箱」「A列車で行こう」といった観光列車が続々と登場し、内装はどんどん豪華になっていった。その頂点がななつ星と或る列車だ。

水戸岡デザインの観光列車は九州を飛び出し、全国各地に誕生した。その一方で、水戸岡デザインとは異なる、モダンなデザインの観光列車も登場した。

たとえば、JR東日本が3月14日から運行する都心と伊豆半島を結ぶ特急「サフィール踊り子」は、全車両グリーン席で、「上質で優雅な旅を楽しむ」がコンセプト。近畿日本鉄道が同日に大阪と名古屋を結ぶ特急として投入する「ひのとり」も、広いシートピッチや全席バックシェルが特徴で、車内はすっきりとした印象だ。

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