ジム・ロジャーズ「金はこれから更に上昇する」 「新型コロナショック」は「序章」に過ぎない?

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しかし、金については、新型コロナウイルスにからんだ短期の話をしようとしているのではありません。今、多くの富裕層が現物の金地金や現金で資産を持ち始めています。これはロジャーズ氏の言うとおり、政治的不確実性や景気後退懸念などを大きな理由として挙げることができます。

現在は世界的に超低金利で、銀行に預けていてもほとんど利息がつかないので、民間会社の金庫に、金地金や現金などを入れている人もいるようです。キャッシュレスが進む中、一般の人はマイナス金利や金利がゼロでも銀行に預金をしておくというのが現実的です。しかし、富裕層の多くはキャッシュレスが促進されても、「ニコニコ現金主義」です。セキュリティ面で気にする人や記録が残るのを嫌う人もいます。管理されたくないので、SNSも一切使わないという人もいるほどです。

ご存じの通り、日本では、2024年度上半期に新紙幣に刷新される予定です。もし新紙幣に切り替わると、金庫などで保管されている紙幣が数年以内に「表」に出てくる可能性が高いです。次第に旧紙幣は利便性が下がっていくからです。キャッシュレス化や新紙幣への切り替えによって、現金資産の補足が促進されるかもしれません。

富裕層は「有事」に備え、金を保有している

一方、紙幣に比べると、金地金は古くから世界中で資産として流通してきた歴史があります。例えばインド人は伝統的に資産防衛策として金を購入します。妻や子供達の耳飾りや腕輪などがゴールドの人を、よく見かけます。政情も安定しておらず、凄まじいインフレなどを歴史的に経験してきたからでしょう。そのため、どんなに政情が変わろうと、価値が失われない金を買うのです。富裕層はETF(上場投資信託)ではなく、確かな裏付けを確認できる現物で保有をしたいようです。

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ただし、一般の人が金の現物を保有する場合、保管料がかかる上に売却をする時に一般に譲渡所得として税金を支払う必要があります。また、保有期間によって計算方法が異なります。

筆者も現物の金を保有した経験がありますが、やはり手間がかかりました。また、配当なども産まないため、現物は富裕層が資産の保全という目的で、資産を分散させるには有効です。

それでも、金価格の高騰はまだまだ「序章」であって、これからも進むという見方が優勢です。金融緩和が進む中、通貨に対する不信感から、防衛意識が働いているのでしょう。一般の人は、金ETFで一定額を保有するのが現実的かもしれません。

すでにシンガポールの学校では、政府の指導によって、2月1日から7月31日までの間に中国本土への渡航の予定を申告する必要があり、この期間に中国本土に行った人は14日間の自宅待機をしなければなりません。シンガポール政府は新型コロナウイルスに対しても、長期戦を考えていますが、日本の人々もウイルスに対してだけでなく、長い目で自らの資産について考えてみる時期にさしかかっています。

花輪 陽子 ファイナンシャルプランナー

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はなわ ようこ / Yoko Hanawa

1級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)CFP®認定者。外資系投資銀行を経てFPとして独立。2015年から生活の拠点をシンガポールに移し、東京とシンガポールでセミナー講師など幅広い活動を行う。『少子高齢化でも老後不安ゼロ シンガポールで見た日本の未来理想図』 (講談社+α新書) 、『夫婦で貯める1億円!』(ダイヤモンド社)など著書多数。花輪陽子オフィシャルサイト 海外に住んでいる日本人のお金に関する悩みを解消するサイトも運営。まぐまぐ「花輪陽子のシンガポール富裕層の教え 海外投資&起業実践編」も。

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