世界最大級の映画見本市「AFM」潜入リポート《ハリウッド・フィルムスクール研修記10》
『トランスフォーマー』や『ハリー・ポッター』のような作品は、ハリウッドのメジャースタジオ(※)が出資をしているため、北米はもちろんのこと世界各地での配給も自社(もしくは提携会社)が行うため、わざわざ海外のバイヤーを探す必要はありません。 ※通常、ワーナーブラザーズ、パラマウント、20世紀フォックス、ソニー、ディズニー、ユニバーサルの6社を指す。
一方で、投資家や銀行、もしくは私財を用いて作られる映画も多く存在します。たとえば昨年アカデミー作品賞を受賞した『スラムドッグ$ミリオネア』などが相当します。
このような映画は、メジャースタジオの海外配給網に乗らないため、自分たちで配給先を探す必要があり、AFMをはじめとする映画見本市がそのマッチング機能を果たすわけです。
映画好きの方はご存じと思いますが、ここ数年、日本ではアメリカの「インデペンデント映画」の公開本数が減っています。これは世界的な潮流でもあり、特に昨年は“リーマン・ショック”も相まって、AFMへの出展企業も来場者も大きく減少しました。何より買い付け作品が圧倒的に減ったそうです。
しかし今年のAFMは、高い前評判を得ていました。その火付け役は、今年大ヒットした2本のインデペンデント作品です。
1本は『パラノーマル・アクティビティ』。製作費わずか150万円(!!)で作られたホラーが「史上最高に怖い」との口コミで、なんと現在までに北米だけで興行収入100億円を突破。10年前に大ヒットした『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』の再来と言われています。
もう1本は『ディストリクト9』。20代監督が手掛けた予算30億円の映画が、この夏、世界で200億円近い興行収入を上げました。この2本のインディペンデント映画が、昨年AFMで売買されていたことから、業界関係者からAFMは再び注目の的となったわけです。
そして、私がインターンすることになった出展企業は、この『パラノーマル・アクティビティ』を発掘し、世界中に売った張本人。期せずして、マーケット一番の話題企業で働けることになりました。