遂にティファニーまで買ったLVMHトップの野望

「カシミアを着た狼」と呼ばれた男の素顔

LVMH CEOのベルナール・アルノー氏。彼の経営手腕とは(写真:ロイター/アフロ)
ラグジュアリーブランドとして世界をリードし続け、2019年度、ついに売上高が6兆円を突破したLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)。宝飾大手のティファニーを買収したことも記憶に新しく、CEOのベルナール・アルノーの野心はとどまることを知りません。
「イノベーター」で読むアパレル全史』の著者・中野香織氏が、巨大な資本をおさめたアルノーの経営手腕について語ります。

現在、世界の都市部の中心繁華街へ行くと、どこも同じ光景のような印象を受けることがある。その原因の1つが、ラグジュアリーブランドの旗艦店である。店内で買い物をしているのは、カジュアルスタイルの若い旅行者が多い。一時、それが「日本人ばかり」と揶揄された時期もあったが、2010年代には「中国人ばかり」になった。

ラグジュアリーブランドは、世界の都市部ならどこでも同じものがほぼ同じ価格で買い求められる、規格化・平準化されたものになった。「ブランド」の力を最大限に使い、世界の都市の風景を「ブランド」によって同じにしてしまったプレイヤーの中でも、最大の影響力を持つのがLVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)グループを率いるベルナール・アルノーである。

LVMHはファッション・レザーグッズ、時計・宝飾、化粧品、お酒のブランドを60以上持つ、世界最大のブランドコングロマリットである。2018年12月期の売上高は約5兆8064億円。同様なラグジュアリーファッションのコングロマリットではケリンググループが同時期で1兆6944億円なので、圧倒的な首位である。

アルノーがディオールを狙った理由

2019年版「フォーブス」の世界長者番付では世界第3位というアルノーは、フランスのルーベに生まれた。ポリテクニークを卒業した後、父親の事業を受け継ぎ、不動産業でかなりの成功を収めていた。31歳になったとき、ミッテラン大統領(当時)の社会主義政策を嫌い、資産を保護しようとしてアメリカに渡り、アメリカ式の経営を学ぶ。

ニューヨークで彼は、現地のフランス人が話題にしていたフランスの繊維帝国マルセル・ブサック・グループに目をつける。グループは2度にわたる破産申し立ての後、会社を買い取る人を探していたのだ。ブサックは紙おむつ、百貨店など、互いに何の脈絡もないいくつかの企業を擁していたのだが、その中の1つに「クリスチャン・ディオール」があった。アルノーはほかならぬディオールを狙い、自身の不動産業を担保にした資金でグループを1984年に買収した。

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