安全資産に逃げ込むマネー 下げきつい日本株、「最悪」に備え世界同時株安に

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3月14日、ウクライナ情勢や中国経済などに対する警戒感が高まり、世界同時株安が進行している。写真は都内の株価ボード。2月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 14日 ロイター] -ウクライナ情勢や中国経済などに対する警戒感が高まり、世界同時株安が進行している。軍事衝突や信用収縮など「最悪」の事態が起きる可能性は小さいとの見方が多いものの、先行きの不透明感は極めて濃く、市場における緊張感が高まっている。マネーは米国債や金、円など安全資産に逃避。投資家はリスクオン・ポジションを閉じる動きを強めている。

クリミア住民投票けん制した米国務長官

投資家が資金巻き戻しを急いだのは、ウクライナ南部のクリミア自治共和国でロシア編入の是非を問う住民投票が16日に迫る中、米欧とロシアの緊張感が一段と高まったためだ。

米国のケリー国務長官は13日、住民投票が予定通りに16日に実施されれば、米国と欧州連合(EU)は17日に「一連の重大な措置」を発動させると発言。もし米欧が経済制裁をロシアに発動すれば、ロシアも報復措置に出るとみられている。

現時点で、軍事衝突などのケースに至る可能性は小さいとの見方が一般的だ。米国はともかく、欧州とロシアは経済面でがっちり結びついている。武力行使は両者にとってデメリットが多い。

しかし、それは同時に効果的な方法を提示しにくいことを意味する。「面子があり、本音の部分もありで、すっきりとした解決策を見出しにくい」とニッセイ基礎研究所・上席研究員の伊藤さゆり氏は指摘する。

また、16日の住民投票でクリミアのロシア編入が決まったとしても、具体的な編入方法についてはまだ「落としどころ」が見えない。

クリミア自治共和国の独立については、ウクライナが連邦制を導入して統一を守る案もあるが、現代ロシア研究を専門とする新潟県立大学の袴田茂樹教授は「ウクライナ東部と南部は、工業など重要産業が集中している。だが、西部や中央部はほぼ農業のみ。連邦制導入は地域格差が拡大して国が不安定となるため、現実的ではない」と指摘する。

「落としどころ」を見いだせないまま、対抗措置がどんどんエスカレートしていけば、武力衝突という「最悪」の事態が勃発する可能性も高まる。ロシア語が堪能でプーチン首相と旧知の仲であるドイツのメルケル首相が、やや距離を取り始めているとの見方もある。メルケル首相は13日、議会演説で、プーチン大統領がソ連崩壊後の長年にわたる友好関係を壊そうとしていると嘆いた。

「いったんテールリスクとして織り込んだウクライナ情勢だが、再び先が見えなくなってきた。ウクライナ自体の経済規模は小さいが、制裁措置の影響でロシア経済が減速すれば、世界経済に与える影響は小さくない」(野村証券・投資情報部エクイティ・マーケット・ストラテジストの村山誠氏)と市場では警戒感が強まっている。

閉じられるリスクポジション

「週末をまたいで余計なリスクポジションは持てない」(国内証券)──。ウクライナだけではなく、中国では経済指標が下振れたほか、理財商品のデフォルト(債務不履行)懸念など先行きが一段と不透明になってきたことで、世界的にリスクオン・ポジションの巻き戻しが加速している。

13日の米ダウ<.DJI>は230ドル安。地政学リスクが高まる欧州株も軒並み安となった。日経平均<.N225>も一時500円を超える大幅安となり、世界同時株安が進行している。

売りの主体は海外勢だ。「パニック的な売りが出ているわけではないが、週末に地政学リスクが高まる可能性があり、海外勢から短期的なリスクを回避する売りが出ている」(大手証券)という。

ポジション調整の株売りが収まれば、日経平均が1万4000円、ドル100円を大きく割り込む可能性は小さいとの見方は多い。ただ、事態は流動的。市場では「リーンマン・ショック前夜になりかねない」(国内証券)との声もあり、予断を許さない。

一方、米国債や金など「安全資産」にマネーはいったん逃避しようとしている。10年米国債利回りは2.65%に低下。金現物は6カ月ぶりの高値となっている。日本の10年国債利回りも夕方の取引で0.62%まで低下した。

「2月の米雇用統計はそれほど悪くなかったが、寒波の影響を除いても米経済がしっかりしているとの確信は、まだ持てない。そのなかでウクライナや中国でのリスクが高まっており、週末にかけてリスクポジションを持っておくのは危険と投資家は判断したようだ」と、SMBC日興証券・シニアマーケットエコノミストの嶋津洋樹氏は指摘する。

下げきつい日本株

世界的なリスクオフの中でも、日本株の下げはきつい。日経平均は14日の市場で3.30%安。上海総合指数<.SSEC>の0.73%安や韓国の総合株価指数<.KS11>の0.75%安、13日の米ダウの1.41%、FTSEユーロファースト300種指数<.FTEU3>の1.06%安と比べて、下落率が突出している。日経平均は11日終値の1万5224円から3日間で5.8%、約900円下げる急落となった。

世界の景気敏感株という日本株の特徴が、マイナスに効いているほか、リスクオフの円買いでドル/円は101円台まで下落。国内輸出企業の業績上積み期待が後退している。「日銀の黒田東彦総裁が、強気の姿勢を崩さず、追加緩和期待が後退したことも、一部の海外短期筋の売りを誘っている」(外資系証券)という。

さらに来月に迫った消費増税の影響が懸念されている。需給的には、ヘッジファンドなど海外勢の売りに対して、国内勢などの買いが依然鈍いのが要因だ。日経平均の予想PER(株価収益率)は14倍台前半まで低下した。

歴史的に見ても割安感が漂う水準だが、株価急落で信用取引の追い証が発生し始めた個人投資家は逆張りに動けず、年度末が迫ってきた機関投資家も静観を決め込んでいる。

(伊賀大記 編集:田巻一彦)

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