トランプと対峙する民主党有力候補4人に注目 バイデン氏とサンダース氏を中心とする動き

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また、支持層の特徴という点では、ウォーレン氏とブティジェッジ氏が高学歴のエリート層を主たる支持基盤とするのに対し、バイデン氏とサンダース氏は白人労働者層に支持を広げていると見られる。

そして、4者の外交姿勢を理解するうえで最も重要と思われるのが、党内穏健派と党内左派の対立図式である。

民主党の中では、かねて穏健派とリベラル派の対立があった。クリントン政権期を中心に、穏健派が党内で優勢となる時期もあったが、2000年代に入ってからの穏健派は、党内での発言力を低下させている。

対照的に、今日の民主党で急激に勢力を伸ばしているのが、サンダース氏に代表される党内左派である。こうした党内左派は、経済政策の分野を中心に、従来のリベラル派よりもさらに左寄りの政策を打ち出しており、日本のメディアでは「急進左派」「最左派」といった表現で紹介されることもある。

民主党有力候補4人を、穏健派と台頭する左派の対立図式の中に位置付けてみると、①バイデン氏、②ブティジェッジ氏が党内穏健派で、③ウォーレン氏、④サンダース氏が党内左派という格好になる(後ろに行くほど左寄り)。特にバイデン氏とサンダース氏は、それぞれ穏健派と左派の立場を、自ら意識的に強調しており、この両者の存在を、今日の民主党が抱える亀裂の象徴と見る向きもある。

アメリカにある3つの国際秩序観

ところで、トランプ政権発足後のアメリカでは、世界におけるアメリカの役割や、国際秩序のあり方をめぐって、大きく3つの路線があるとされる。

第1の路線は、党派の違いを超えて長らく支持されてきた主流派の外交路線である。この路線は、民主主義や自由貿易を基調とするアメリカ主導の既存秩序を重視するものであり、軍事、経済、価値のすべての分野において、アメリカがリーダーシップを発揮すべきとする。トランプ大統領によって「破壊」されつつある既存秩序の「修復」を、今後のアメリカ外交の重点目標に据える姿勢も、この路線の特徴である。

第2の路線は、共和党の中で支持を広げつつある「アメリカ第一」の外交路線である。トランプ大統領に代表されるこの路線は、対外関与への消極姿勢、高関税政策の推進、民主化・人権促進への無関心といった特徴がある。アメリカ国内の諸問題を置き去りにしたとして、既存秩序に強い不満を示すのも、この路線の特徴である。

第3の路線は、民主党の中で支持を広げつつある「プログレッシブな外交」と呼ばれる路線である。2020年大統領選挙に向けて、党内左派のサンダース氏とウォーレン氏は、(苦手とされてきた)外交問題に関する発信を強化している。こうした中、今日の民主党では、主流派の外交路線とも「アメリカ第一」路線とも異なる「プログレッシブな外交」を求める動きが強まっている。

「プログレッシブな外交」は、民主主義・人権を重視する立場から、「アメリカ第一」路線を非難するが、これと同時に、海外への軍事介入や自由貿易を警戒する立場から、主流派の外交路線にも反対する。こうしたことから、「プログレッシブな外交」は既存秩序の「修復」ではなく、既存秩序の「改善」を求める立場と言える。

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