トランプと対峙する民主党有力候補4人に注目 バイデン氏とサンダース氏を中心とする動き

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こうした消極姿勢の背景として考えられるのは、党内で「プログレッシブな外交」が支持を広げ、豊富な外交経験が必ずしも「得点」とはみなされない、という民主党の現状である。とくに、上院議員であったバイデン氏が、対イラク軍事力行使容認決議(2002年10月)に賛成票を投じた過去は、主流派の外交路線の「失敗」を象徴するものとして、今もなお執拗な批判を受けている。

本選挙に向けた課題

最後に、民主党候補が抱える、本選挙に向けた課題について、いくつか指摘してみたい。第1は、民主党の左傾化に伴うリスクである。

この点は、例えば、気候変動の問題に関して指摘できる。気候変動対策は、もともと民主党の中でも、左寄りの勢力が重視する案件であった。しかし今日においては、気候変動を「安全保障上の最大の脅威」とする見方が、民主党全体に浸透しつつある。この結果、2020年選挙に向けては、民主党候補が、競うように気候変動対策を有権者にアピールする格好になっている。

しかし、こうした民主党の現状については、有権者にアピールできる政策が必ずしも問題解決に資する政策でないとする声や、本選挙で不利に働くことを危惧する声が、一部から出ている。

第2の課題は、外交政策をめぐる党内亀裂が深まる危険性である。2020年選挙に向けて、民主党では、党内の結束を模索する動きが見られる。しかし、具体的争点を目の前にすると、有力候補4人の間でも、立場の違いが鮮明になる場面が多い。

例えばベネズエラ問題について、バイデン氏、ブティジェッジ氏、ウォーレン氏は、マドゥロ政権に対峙するグアイド暫定大統領を承認しているが(ただしウォーレン氏の承認は他の2人より遅い)、サンダース氏は承認を拒んでいる。

また、トランプ政権の発足によってアメリカが離脱した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定については、「最善ではないがよき協定であった」とするバイデン氏に対し、他の3者は、現状では参加しないとの意向を強調している。この先、トランプ政権が揺さぶりを強めてくることも想定できるだけに、こうした党内の亀裂も、本選挙に向けた不安材料になりうる。

第3の課題は、批判対象となるトランプ政権自体の外交方針が定まっていないことである。すでに述べたように、世界におけるアメリカの役割をめぐっては、共和党の中においても、大きな考え方の違いがある。

とくにトランプ政権では、「アメリカ第一」の路線を掲げるトランプ大統領と、主流派の外交路線を重視する政権幹部が同居する形になっていて、基本的な外交方針そのものが見定めにくい。「アメリカ第一」路線と主流派の外交路線とで大きく立場が異なる争点も少なくないだけに(対ロシア政策や同盟国との関係など)、こうしたトランプ政権の特質が、民主党候補を悩ます場面も出てくるかもしれない。

いずれの候補者にとっても、民主党の指名を勝ち取ることが、まずもって重要であることは間違いない。しかし、このたびの民主党予備選では、「トランプ大統領に勝てる候補者」を選ぶことが極めて重視されているとも言われる。こうした点を踏まえると、民主党の各候補者にとっては、本選挙も見据えた発信や振る舞いが、ますます重要になってくるであろう。

(文/西住祐亮)

【著者略歴】
西住祐亮(にしずみ ゆうすけ)
/中央大学講師
1982年生まれ。2015年、中央大学博士後期課程修了。千葉商科大学講師を経て、現在は国立国会図書館非常勤調査員なども務める。論文「オバマ政権下における紛争介入政策の検証 介入と不介入の狭間で」など。
「外交」編集部

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世界の動きを見つめ、日本のビジョンを語る、国内唯一の隔月刊外交専門誌。 内外の筆者が問題の核心を鋭く分析する。発行元は外務省だが、内容は独立した編集委員会が責任をもって編集している。

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