東京メトロ社長が明かす「遅延を減らす秘策」 新技術の「無線式列車制御」で何が変わるか

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――地下鉄を対象としたテロも心配です。

山村明義(やまむら あきよし)/1958年生まれ。1980年東北大学工学部卒業後、帝都高速度交通営団(現・東京地下鉄)入団。鉄道本部長などを経て、2017年に社長就任(撮影:尾形文繁)

脱線、気象災害といったさまざまなトラブルを想定して、駅員、乗務員、総合指令所、技術、車両など関係部署みんなで異常時総合訓練を行っている。

警察も参加して刃物を振り回す人にどう対処するかという訓練も行ったし、直近では、車内に爆発物があったという想定で、お客様の待避や、消防がケガをした人を救出するといった訓練をした。ホームドア越しにどうやって重傷者を搬出するかという点で、非常にリアルな訓練ができた。私も見学して、状況を見て、「何か課題はないか」と考えて、次に役立てたいと思っている。

――列車の運行で今後重要になってくる技術は?

技術の自社開発には限界があるので、いろいろな会社と協業して、お互いの技術や強みを掛け合わせてイノベーションを進めていく。無線通信を利用して列車の位置と速度を検知して、列車の間隔や速度をきめ細かく制御するCBTC(無線式列車制御システム)は非常に重要な技術だ。これまでの固定閉塞の軌道回路方式に比べて列車の安全・安定運行が大きく向上する。

丸ノ内線では第三者機関の安全性認証が終わったので、これから許認可や工事を行い、2023年度に導入したい。それ以降も日比谷線など路線ごとに順次導入を進めていきたい。

故障の予兆を検知

――列車間隔を詰めることでラッシュ時の列車の本数を増やせますか?

理屈上は増やせるが、ラッシュ時はすでにかなりの本数が走っている。どちらかというと、CBTC導入によって生まれた余裕は列車間隔の安定性に充てて、遅延防止に振り向けたい。

ほかにはCBM(状態基準保全)も重要な技術だ。今まではこの部品は10年おきに交換し、装置は12年おきにオーバーホールといった周期的な予防保全を行ってきたが、これからはさまざまな部品、装置、設備にセンサーを付けて、IoTでセンサーから発信するデータを取得してコンディションを測ることでメンテナンスを行う。

丸ノ内線の2000系には設置済みで、検車区、指令所、本社で絶えず状態監視をしている。これで故障の予兆を検知するといった、安全性を高めるための質の高いメンテナンスが可能になる。

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