中外製薬、時価総額で「武田超え」寸前のわけ 血友病治療薬「ヘムライブラ」が支える好業績

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中外は、国内の製薬会社の中では異質なビジネスモデルを持っている。2002年にロシュが中外の株式50.1%を取得したが、中外の上場は維持され、独立経営を守ってきた。中外が「戦略的提携」と呼ぶこの関係が、「ヘムライブラのような大型薬の開発成功につながったのは間違いない」(小坂達朗社長)。

製薬会社の生命線である新薬開発は、後期段階の臨床試験で大きなコストがかかる。中外はこの部分をロシュに任せており、中外は創薬そのものの研究に集中的に費用を投じることができる。

海外販売はロシュにお任せ

海外での販売もロシュにお任せだ。コストのかかる販売網を自前で持つ必要がなくなる。中外が創製し、ロシュが世界で販売した薬は、売上高に応じて中外がロイヤルティ収入を受け取ることになっている。

中外の2020年12月期は「アバスチン」や「ハーセプチン」といった抗がん剤の特許が切れ、後発品が参入してくることで国内は減収になる見込み。一方、海外ではヘムライブラがさらに拡大する見通しだ。

2020年12月期に計画している営業利益2750億円のうち、ヘムライブラを中心としたロシュからのロイヤルティ収入は1410億円にのぼる。2020年12月期予想の営業利益率は製薬業界でも屈指の37%に達する。

2020年3月には現在、社長兼CEOの小坂達朗氏がCEOのまま会長職に就き、開発畑のトップである奥田修・上席執行役員が新たな社長兼COOに就く。新社長になる奥田氏は「いまの中外製薬は新しい薬を作っていけるようになってきている。この好循環を持続させていくのが自分の役目だ」と語った。

現在、中外では、ヘムライブラとは異なる仕組みの血友病薬など、次世代薬の候補が複数臨床試験入りしている。こうした新薬候補の開発が順調に進めば、時価総額首位に返り咲く日もそう遠くないだろう。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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