アプラス、投資用不動産に「ずさん融資」の実態 価格水増しでも満額融資、金利は驚きの5.8%

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同業他社を見ると、投資用不動産向けのローンの金利設定は1%~2%が多く、アプラスの本体ローンの金利は決して低くはない。そこに上乗せされたサポートクレジットの金利は、不動産融資としてはかなりの高水準だ。この女性の場合、借入額は1664万円だが、金利負担を加味した支払額は、単純計算で2300万円程度になる可能性がある。

アプラスによれば、サポートクレジットの融資額の上限は500万円で、平均利用額は約180万円。アプラス投資用マンションローンの利用者の2割程度が、サポートクレジットを併用しているという。なお、サポートクレジットはアプラス投資用マンションローンに付随する商品で、単体での融資は行っていない。

”消えた”自己資金

ほかにも融資契約の手続きには不可解な点が多い。通常の契約では申し込みの後、さらに審査が通って正式契約に至る段階で、少なくとも2度、電話での意思確認を行う。だが、複数の物件所有者は「アプラスから連絡が来た覚えはない」と話す。

また、前出の40代女性は、今年初めにアプラスに審査書類を取り寄せると、身に覚えのない源泉徴収票が送られてきた。「自分が提出したのは確定申告書。源泉徴収票は提出していない」(同)。

さらに不可解なのは、自己資金の額だ。前出の融資関係書類では、自己資金として36万円を負担することになっているが、「実際には1円も払っていない」(同)。

別のケースでも自己資金欄が改ざんされていた。首都圏に住む20代の女性は、2017年9月に中古マンション購入のためアプラス投資用マンションローンを利用した。物件価格1580万円に対して、本体ローン1160万円、サポートクレジット348万円、自己資金72万円という条件だった。だがこの女性も、自己資金は払っていないという。

なぜ自己資金欄が改ざんされたのかはよくわかっていない。ただ、本体ローンとサポートクレジットを合わせても物件価格をカバーできない場合に、物件価格と帳尻を合わせるために書かれた可能性がある。

これまで東洋経済では、物件価格が水増しされた契約書を5件現認しているが、そのすべてでサポートクレジットが使われていた。また、いずれもアルヒの同じFC店が融資を取り次いでいた。

2月3日時点で、アプラスは「年収証明の改ざんや不自然な不動産評価があるという情報を受領している」と発表しているだけだ。だが、前出のマンション販売業者の関係者は、「アプラス社員から『(源泉徴収票の改ざんを)あまり派手にやらないでくださいよ』という話をされた」と打ち明ける。

東洋経済は、取材の過程で名前の挙がったアプラスの社員にも連絡を取ったが、「そうした話はしていない」と会社を通じて回答があった。

本当にアプラスは、不正の認知や関与がないまま、価格が水増しされた複数の物件に満額融資をしていたのか。現時点ではっきりしているのは、顧客が内容をまったく理解しない中で、融資が実行されたという事実だ。

誰が審査書類の改ざんを主導したのか。融資はどの程度の規模で行われたのか。詳しくは社内調査を待つばかりだが、「不正が見抜けなかった」という総括は、金融機関としてあまりに無垢だろう。

一井 純 東洋経済 記者

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いちい じゅん / Jun Ichii

建設、不動産業の取材を経て現在は金融業界担当。銀行、信託、ファンド、金融行政などを取材。

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