「婚活」マッチングに銀行が乗り出す深い事情 出会いを求めるパーティーはキャンセル待ち
低金利の長期化や地域経済の停滞で、苦戦が続く地方銀行。メインの融資業務だけでなく、サービスの多様化が今や重要課題だ。生き残るためにはこれまでにない柔軟な発想が求められている。
そんな折、「取引先から『銀行はこんなに柔軟になったんですか』と驚かれる」と語るのは、名古屋銀行・法人営業部の海川隼也氏。驚かれる理由は、名銀が「婚活」に乗り出したからだ。
名銀は2月14日、独自の婚活パーティーを開催する。場所は、名古屋駅前の「名古屋銀行ハートフルプラザ」で、今回が3回目。銀行との取引の有無とは関係なく募集したが、集客は好調ですぐに満杯となり、キャンセル待ちの状況となった。
後継者作りの一環として始まった
婚活パーティーを実施するきっかけとなったのは、2018年に行ったIBJとの業務提携だ。IBJは東証1部上場企業で、婚活支援サービスを展開している。名銀は取引先企業の独身の経営者や後継者に対し、IBJの直営結婚相談所を紹介する。「跡取りがいない」という理由で廃業したり、事業を売却したりする会社は少なくない。経営者やその子どもへの婚活支援は、事業承継支援の一環なのだ。
かねてから、「うちの息子に誰かいい人いないかな」といった相談はあったものの、銀行としては対応できずにいた。それがIBJとの提携で道が開けた。「取引先の関心も高い」と海川氏。新規開拓の際にも、婚活支援は格好の話のタネになる。
ちなみにIBJの直営結婚相談所の場合、初期費用は通常価格で、エントリーコースの16万5000円からプライムコースの40万9500円まである。月会費はいずれのコースでも1万5500円で、成婚退会の際には、別途20万円の成婚料がかかる(いずれも税抜き)。
名銀は地銀中位行で、愛知県内の地銀ではトップ。主な地盤の愛知県は、トヨタ自動車をはじめ自動車産業を中心とする製造業に強みを持ち、人口増も続いている。とはいえ、他地域に比べ金利が安いことを意味する「名古屋金利」という言葉が生まれるほど、競争環境が厳しい県でもある。長引く金融緩和の影響を受けているのは他の金融機関と同じだ。
取引先企業への婚活支援から、一般顧客へと対象を広げたのが、冒頭に述べた婚活パーティーだ。さらに名銀は福利厚生の一環として、社員とその親族への婚活支援でもIBJと提携。社員のプライベート充実を図る。
またIBJとの提携には、結婚相談所の開業支援も含まれている。IBJは「日本結婚相談所連盟」という結婚相談所の全国ネットワークを構築。加盟相談所に対して「お見合いセッティングシステム」を提供している。名銀は関心のある取引先をIBJに取り次いでおり、これまで30件強をIBJに紹介、20件弱が加盟契約をしたという。
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