精神病院に4年閉じ込められた彼女の壮絶体験

「入院は社会的制裁、市役所も児相も同意」

この主治医が米田さんに付けた診断名は「パーソナリティ障害」。実際、主治医からはたびたび、「あなたはほかの患者を支配する『操作性』がある」と指摘されていた。

「統合失調症や認知症の人のなかには、相手との意思疎通や自己主張がうまくできない人がいます。私は病院スタッフの代わりに相談に乗ったり、病院への不満も聞いてそれを伝えたりする役も担っていたので、それが操作的とみられたのかも」。米田さんに思い当たる節は、それしかないという。

「そもそもパーソナリティ障害では通常は入院の適応とはならない。よほど社会的不適応性が大きいとすれば別だが、だとしたら長期入院などできないはずなので、やはり一般的ではない」。以前、別の精神科病院の院長だった、ことぶき共同診療所の越智祥太医師はそう疑問を呈する。

入院中のつらい思いを書きつづったノート。犬のぬいぐるみは米田さんが制作。院内のイベントではスタッフ同様に働いたという(記者撮影)

米田さんは4年間のほとんどを、4人の相部屋の病室で過ごした。うち2人が統合失調症で夜中に大声を上げることも多く、不眠に悩まされていた。そうした状況を主治医に訴え睡眠薬の処方を依頼したところ、「あなたは病気ではないから、薬は出さない」と言われたという。

実際、彼女が入院中に服薬していたのは鉄剤と耳鳴りの漢方薬などで、頓服で出されていた精神安定剤は1度も用いることはなかった。向精神薬等の薬物治療は4年間いっさい受けておらず、一般的な作業療法以外の治療プログラムもとくになかった。そのため看護師たちからも「米ちゃん、なんでここにいるの?」「米ちゃん、ぜんぜん病気に見えないんだけど」と不思議がられたという。

「面談した主治医からは、彼女には薬物治療も治療プログラムもないとはっきり言われ、ではなぜ退院できないのかと尋ねたら、『この人は操作的なんです』『人を支配しようとする』と言われ、これではまったく話にならないと感じた」。米田さんの退院を支援してきた、佐々木信夫弁護士はそう振り返る。

「4年間で湯船につかったのは数回だけ」

閉鎖病棟内の生活においては、制約が多岐にわたる。

入浴は火曜、金曜午前中の週2回だけ。しかも4人一組で入り、制限時間は15分だ。一時は要介護者の入浴介助を男性スタッフが行い、浴室内で鉢合わせすることすらあった。

また男女交代制でその間の湯の交換が途中からなくなったことや、要介護者が湯を汚してしまうこともあり、「家ではぬるま湯で1時間ぐらいリラックスするのが楽しみだったが、4年間で湯船につかったのは数回だけ。頭皮のかゆみが悪化して、せめて手のかからない自立の人だけでも、週3回にしてほしいと交渉したけど駄目でした」。

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