「希少資源」争奪戦! エコカーの命運を握るレアアース

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いびつな中国への依存 危機感高める自動車業界

ところが、その中国がレアアースの輸出規制を年々強めている。外国企業によるレアアース鉱山の開発を禁止する一方、04年から国が輸出数量を管理・制限する制度も導入。輸出割当数量の削減が続き、今年の割当枠は05年の7割程度にまで減った。06年からは輸出に関税を課し、昨年は税率を一挙に従来から倍の20%台に引き上げた。今年夏には現地メディアが「中国政府は今後、レアアースの輸出を禁止する」と報道し、日本でも業界関係者を慌てさせ、経済産業省が中国政府へ事実確認に動く騒ぎに発展した。当局は輸出禁止を否定したが、さらなる輸出枠の削減が確実視されている。

今や「世界の工場」となった中国は、レアアースの消費量も世界最大。急激な経済・産業発展に伴って、その消費量が激増しており、中国政府は輸出を削り国内産業に回したい。また、自国内で豊富に有するレアアース資源は産業戦略における強力な“武器”にもなる。ある業界関係者は「中国政府は、日本のハイテク加工産業の技術を欲しがっている。レアアース輸出禁止もちらつかせながら、自国内に有力企業を呼び込むつもりだろう」と解説する。

こうした中国の動きを受けて、リスクの低減を図ろうと大手商社が調達ルート確立に動いているわけだ。一方、エコカーに未来を託す自動車業界はことさら危機感を強めており、中でも活発な動きが見られるのが、ハイブリッド車で先行するトヨタ自動車。昨年末、同社傘下の豊田通商は、インド産レアアースの販売権を持つ国内専門商社を買収。双日とのベトナム鉱床開発に加えて、インドネシアでもスズ残渣からの資源回収を検討している。他社も同様で、ある大手自動車メーカーは取引先に対し、「必要なレアアースが確保できるなら、山の一つや二つ買ってもいい」とさえ言い切っているほどだ。

実は、中国は世界最大の埋蔵国であるにもかかわらず、さらなる資源確保を狙い、国外の権益確保にも動いている。これは中国がレアアースを「21世紀の戦略資源」と見据える証拠だろう。エコカーをはじめとする次世代産業で世界屈指の技術力を誇る日本。強みを最大限に発揮するうえで、希少資源の安定確保が大きなカギを握っている。

(渡辺清治 =週刊東洋経済)

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