立憲と国民が「ワンチーム」になれない理由 「合流の原点」で折り合えず、広がる悲観論

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数次の党首会談を踏まえて、1月中旬の国民民主の両院議員総会で玉木氏が説明したのが党首会談での同氏の提案だ。具体的には①党名は立憲民主以外で、民主党も選択肢②原発ゼロ法案は撤回して再協議③新党の綱領に「改革中道」との文言を入れる、というのが骨子。対等合併を前提にした合流の条件だが、いずれも立憲民主側が同意できない内容で、枝野氏からも当然のように拒否された。

この玉木氏の提案に対し、両院総会では意見が対立した。衆院若手は「とにかく大幅譲歩してでも早くまとめて、1つになるべきだ」と早期合流の決断を迫った。結党以来、一貫して政党支持率が1%前後と低迷が続き、「次期衆院選での落選の恐怖が若手を合流に駆り立てている」(幹部)ためだ。

一方、当面選挙のない参院議員を中心に「本質的な詰めが必要で、丁寧に議論すべきだ」などと早期合流慎重論も相次いだ。2019年7月の参院選で、立憲民主と熾烈な争いを繰り広げた参院側には「立憲民主への嫌悪感が根強い」(幹部)。

旧民主党時代から繰り返される内部対立

こうした党内の意見対立を踏まえて、玉木氏は継続協議を求めたが、枝野氏は「これ以上譲るべき点はない」として、交渉は不調に終わった。この結果に対し、立憲民主側は「玉木代表がぼんくらだったからだ」(幹部)、国民民主側は「枝野氏は独裁者だ」(若手)などと非難の応酬となっている。

こうした状況に、野党結集のキーマンの1人とされる山本太郎・れいわ新選組代表は「もともと一緒だった人達が、なんで改めて合流できないのか」と呆れる。しかし、旧民主党時代から政治路線や基本政策での対立を繰り返し、政権交代を果たしても、党内バラバラで政権を手放した過去から、「今になっても脱皮できない」(首相経験者)のが実情だ。

一時ささやかれた通常国会での冒頭解散説も消え、東京五輪・パラリンピックより前の解散はなくなったという政治状況が、「取りあえず、合流の緊急性がなくなった」(国民民主幹部)との安堵感につながっている。ただ、「時間をかければかけるだけ、合流の機運は薄れる」(立憲民主幹部)との指摘もあり、「改めて交渉する場合も、障害はさらに大きくなる」(同)との声は少なくない。

「与党の嫌がることをするのが野党の役割」(自民長老)という永田町の政治論からみると、今回の合流見送りは「火種だらけの安倍政権という敵に、わざわざ塩を送るようなもの」(同)と揶揄されている。このままでは「野党の星」とされる枝野、玉木両氏の器量が厳しく問われかねない。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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