三菱UFJ、異例づくしの新社長を待ち受ける難題 メガ初の理系トップでデジタル化を加速

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縮小

従来の銀行のビジネスモデルは預金を集めて貸し出し、その利ザヤで儲けるというものだった。しかし、長らく続く低金利で利ザヤは縮小。収益力が細る中、過剰に抱えている店舗や人員の削減を進め、収益力を高める必要がある。並行して、預金と貸し出しに代わる新たな収益モデルの確立を急いでいる。

亀澤氏が得意とするデジタル化は、この2つの難題を解決するにあたって最も重要な要素の1つだ。店舗事務の自動化やインターネットバンキングへの移行は、店舗・人員削減の大前提となる。データを活用した融資や非金融も含めた新サービスの創出にもデジタル化は欠かせない。

ライバルである三井住友フィナンシャルグループで、2019年に社長に就任した太田純氏(61歳)もデジタル担当を経験している。

スタートアップ企業からは歓迎の声

三毛氏は、亀澤氏のデジタル分野における知見を「本邦金融界で随一」と評価する。2019年1月には次世代型のデジタル店舗「MUFG NEXT」を開設した。同年2月にはクラウドセキュリティを提供するアメリカのアカマイテクノロジーズと共同でグローバルオープンネットワーク社を設立。1秒間に100万件を超える決済を処理できるネットワークを2020年上期に提供予定だ。ほかにも独自のデジタル通貨「coin」の開発など、将来の種を数多くまいてきた。

フィンテック分野のスタートアップ企業との関係が深いのも亀澤氏の強みだ。MUFGが2015年から実施しているデジタルアクセラレータプログラムを通じて、有望なスタートアップとの関係を築いてきた。

MUFGと関係があるスタートアップ企業は「スタートアップとメガバンクの距離を一気に縮めた」「ほかの金融機関とはオープンイノベーションに対する本気度が違う」と高く評価しており、亀澤氏の社長就任を受けて「スタートアップとの連携がさらに進むのでは」と期待する声も上がる。

ただ、亀澤氏には「三毛氏の置き土産」というべき課題がある。MUFGの2018年度の連結業務純益は1兆0786億円(前年度比12.5%減)。三井住友FGの1兆1923億円を下回り、メガバンク2位に転落した。反転の見通しが立ったとはいえ、2019年度の計画は業務純益1兆0800億円と微増程度。一方、三井住友FGの2019年度の計画は1兆1350億円で、停滞するリテール部門と市場部門の改革は必須だ。

2018年から開始した中期経営計画で「今後MUFGの基幹的ビジネスになる」とした11の柱にも、当初想定を下回る分野がある。例えば、富裕層向けの資産管理ビジネスであるウェルスマネジメント分野では、運用資産残高を2017年度の11.6兆円から2020年度には14.5兆円へ増やす目標であるのに対し、2019年度上期の実績は12兆円にとどまっている。三毛氏も「銀行から証券への紹介は順調に進んだが、対応するための要員体制が不十分だった」としている。

亀澤氏は会見で、現在のMUFGについて「次の絵姿をどう見せるかという『夢』を語れていない」と語った。「理系」「頭取未経験」「デジタル畑」と異例づくしの新社長ははたして、どんな夢を描くのだろうか。

藤原 宏成 東洋経済 記者

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ふじわら ひろなる / Hironaru Fujiwara

1994年生まれ、静岡県浜松市出身。2017年、早稲田大学商学部卒、東洋経済新報社入社。学生時代は、ゼミで金融、サークルで広告を研究。銀行など金融業界を担当。

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