オーストラリア火災で「誤報」流すメディアの愚 メディア王マードックによる情報操作

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気候科学者らは、炎の燃料となる枝や枯れ木を燃やすことに関しては改善の余地があると認識している。しかし、予防的な野焼きをどれだけしても、水の蒸発を促し、土地を干上がらせ、すでに乾燥しているオーストラリアを危機にさらす気温上昇の影響を相殺することはないとも主張する。

消防当局者でさえ、オフシーズンに行う野焼きの大半は、土地利用に関する法令ではなく天候によって妨げられていると報告している。例えば、火災シーズンの長期化や、科学者らが気候変動と関連づけている冬季の極端な降水などだ。

メデイアと役人が「同調」

それでも、マードックの媒体は抵抗し続けている。オーストラリアンは1月9日の社説で「何世紀にもわたって破壊的な森林火災が発生しやすい乾燥した大陸では、野焼きによって燃料を減らすことが不可欠だ」と主張。さらに、「気候変動政策の変更は、森林火災に即座に影響を与えることはない」とした。これは「気候変動というお化け」をはねつける政府当局者と同じ姿勢だ。

多くの人々が懸念しているのは、役人とマードック所有のメディアが同調していることだ。

物理学者で天文学者でもあり、政府の科学顧問も務めたペニー・サケットは、「指導者たちは責任を負うべきであり、彼らはメディアによって責任を負わされるべきだ」と指摘する。

当然ながら、メディア企業が持つ影響力の大きさを計るのは困難だ。オーストラリアンのコラムニストのジェラード・ヘンダーソンは、気候変動は他メディアですでに焦点になっているため、それを取り上げる必要性は高くないという考えを示した。

「気候変動はつねに話題になっているため、それから注意をそらすことは困難だ」とヘンダーソンは言う。

しかし、マードックのメッセージは、少なくとも人々が何を優先するかという点において、突き進んでいる兆しがある。シドニー南部の煙が充満した丘陵地で活動する多くの消防隊員らは、気候変動に関する意見を述べることに躊躇していた(幹部からこの問題は避けるよう指示されたと明かす人も複数いた)。しかし、彼らは野焼きを増やことには即賛成した。

同じように、火災で農場が大きな被害を受けたバーンズデール在住のティナ・ムーンは、怒りを感じるのは政府が自分の所有地周辺の土地を切り開かなかったことだと話す。

ムーンは言う。「気候変動のせいだとは思わない」。

(執筆:Damien Cave記者、翻訳:中丸碧)
(C) 2020The New York Times News Services  

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